ディー・エヌ・エー(DeNA)が2019年6月に提供を始めた人工知能(AI)サービス「DRIVE CHART」。トラック運送会社やタクシー会社などを対象に、国内で年間50万件起きているという交通事故の抑止を支援するものだ。

交通事故の抑止を支援する「DRIVE CHART」の概要
(出所:DeNA)
[画像のクリックで拡大表示]

 トラックやタクシーのドライブレコーダーによって記録される映像、加速/ブレーキの情報、GPS(全地球測位システム)による位置情報などを分析し、ドライバーに安全運転を指導する。「実証実験を終えて商用利用に至った案件もある」と、開発を担当したAI本部AIシステム部データサイエンス第二グループの松井健一グループマネジャーは語る。

DeNAの松井健一AI本部AIシステム部データサイエンス第二グループグループマネジャー
[画像のクリックで拡大表示]

 このサービスのAI開発を主導したのが「Kaggler(カグラー)」と呼ばれるエンジニアたちだ。Kagglerは、AIの国際コンテストのプラットフォーム「Kaggle(カグル)」で腕を磨く人々を指す。常に10個前後のコンテストが開催されており、Kagglerは各コンテストで企業から提供されるデータを基に予測モデル(入力データを基に推論するプログラム)を構築し、予測精度を競う。

 DeNAは「Kaggler枠」と呼ばれる採用枠を設けた上で、入社後も一定割合の時間をKagglerの活動に割ける社内制度を設けるなどして、獲得に力を入れている。DRIVE CHARTなどを開発するデータサイエンスグループには2019年10月時点で20人ほどのAIエンジニアが在籍する。その大半はKaggler枠で採用したという。どのAIエンジニアもKaggleで優秀な成績を収めたデータ分析のエキスパートである。

「Kagglerであれば高い能力が見込める」

 DeNAがKagglerを積極的に採用しているのは、Kagglerにはデータ分析の全工程について経験豊富なエキスパートが多いからだという。一般にデータサイエンティストと呼ばれる人材が増えているが、能力には大きな差があるという。「Kaggleで複数の分野のコンテストに参加し、優れた成績を収めているなら、AIや機械学習モデルの開発について高い能力が見込める」(松井グループマネジャー)

 Kaggleは製造、交通、医療など様々な企業から提供された生のデータを使ってAI開発を競う。そのためKaggleの多くのコンテストに参加すると、必然的に多様なデータを取り扱う鍛錬を積み重ねることになる。エンジニアにとってKaggleとは、様々な流派と腕を競う「AI道場」のような存在といえる。

Kaggleに代表されるデータ分析コンテストの概要
(出所:DeNA)
[画像のクリックで拡大表示]

 例えば学習用データの特性に応じて訓練データと検証データへと適切に切り分けるタスクは、現在の自動化ツールには難しいという。「未知のデータへの対応力は、Kaggleを通じて身に付けられる最も重要な能力だ」(松井グループマネジャー)

学習用データを訓練データと検証(バリデーション)データに分ける手法の巧拙で精度が大きく変わる
(出所:DeNA)
[画像のクリックで拡大表示]

 さらにKagglerは最新のデータ分析手法にも通じている。コンテストの期間中、優れた分析モデルについて最新の論文をチェックする必要に迫られるためだ。

この先は有料会員の登録が必要です。今なら有料会員(月額プラン)が12月末まで無料!

日経 xTECHには有料記事(有料会員向けまたは定期購読者向け)、無料記事(登録会員向け)、フリー記事(誰でも閲覧可能)があります。有料記事でも、登録会員向け配信期間は登録会員への登録が必要な場合があります。有料会員と登録会員に関するFAQはこちら