4割――。メルカリの日本拠点で働くエンジニアに占める外国人の割合である。2018年末時点で350人近くのエンジニアが働いているが、現在は4割近くが外国籍だという。

 メルカリに限らず、AI(人工知能)技術を競争力の源泉にしているAIスタートアップの多くは、エンジニアに占める外国人比率が他の企業より飛び抜けて高い。例えば人事や介護分野のAIを開発するエクサウィザーズは半分弱、エッジデバイス向けAI技術を開発するLeapMindは3割が外国人のエンジニアである。

 外国人エンジニアを積極的に採用する理由は明白だ。AIスタートアップの人事担当者は「日本人のAIエンジニアは絶対数が足りない」と口をそろえる。

 救いとなるのは外国人のAIエンジニアだ。米リンクトイン(LinkedIn)などのSNS(交流サイト)を通じて求人を出すと、日本人よりも外国人からの応募が多くなるという。エクサウィザーズの人事担当者は「創業当初から優秀なエンジニアを広く求めた結果、自然と外国人比率が高くなった」と語る。

 では、外国人AIエンジニアはなぜ就職先として米国ではなく日本を選ぶのか。「東京の生活が好き」「日本文学が好き」「たまたま親の駐在で日本に縁があった」など理由は様々だが、複数のエンジニアは「米国はあまりにもエンジニア同士の競争が激しすぎる」と回答した。

 あるエンジニアは「東京は米シリコンバレー周辺のようなエンジニア同士の激烈な競争がない分、目の前のサービス開発に集中できる」と語る。米国のような高い給与は期待できない一方、そこそこの収入で便利な生活を送れるのは東京の大きな利点だという。

 今後、大企業かスタートアップ企業かを問わず、AIを競争力の源泉にするなら外国人エンジニアの活用は不可欠なのが実情だ。日本のオフィスで働く外国人AIエンジニアの実像と、人材を引き付け活用するスタートアップ企業の工夫を明らかにする。

Pythonの著名ライブラリー開発者、メルカリへ

 外国人AIエンジニアからメルカリに採用の申し込みが殺到している理由の1つに「大量の実データを分析できる」ことがある。2019年8月にメルカリに入社したAIエンジニアリングチームのダビド・クルナポ・エンジニアリングマネジャーも、大量データ分析の魅力に引かれた1人だ。

メルカリ AIエンジニアリングチーム エンジニアリングマネジャーのダビド・クルナポ氏
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 クルナポ氏はAIエンジニアの間でよく知られた人物だ。現在のAI開発に不可欠といえるプログラミング言語「Python」向けの機械学習ライブラリーとして有名な「scikit-learn」の創始者である。

 フランスのトップ教育機関でコンピューターサイエンスを学んでいたクルナポ氏が初来日したのは15年ほど前。三島由紀夫や川端康成など日本文学好きが高じて、交換留学先に日本を選んだ。国際電気通信基礎技術研究所(ATR)を経て、京都大学で2009年に博士号を取得した。

 その後、一度は欧州に戻り英国でコンサルティングを手掛けていたが、「コンサル業務に飽きてきたのと、英国の食べ物にも飽きてきた(笑)」ことから、2017年に改めて来日。AI開発を請け負うあるスタートアップ企業に入社した。

 日本でのAIシステム開発の日々は充実していたという。だが、日本企業を顧客とした開発には課題もあった。日本企業はデータの取り扱いについて保守的で、思う存分にデータを分析できる環境ではなかった。

 そこで次の活躍の場として選んだのがメルカリだった。CtoCサービスを手掛けるメルカリであれば、社内に蓄積された大量のデータを分析できる。現在は「AIで出品をラクにする」機能を開発する機械学習のエンジニアリングマネージャーとして活躍している。

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