建築設計という知的生産行為の支援に、人工知能(AI)が一役買いそうだ。単純作業の効率化に、深層学習(ディープラーニング)などの最新技術が威力を発揮しつつある。AIで作業を高速化し、浮いた時間をクリエーティブな仕事に振り向ければ、設計はさらに深化するはずだ。

 大成建設 
AIが風環境を予測

 大成建設は風環境を瞬時に予測するAIを開発した。建物形状データを入力するだけで、風速や風向きをはじき出す。設計の初期段階から風環境に配慮した建物配置・形状を手軽に検討できる〔図12〕。

〔図1〕意匠設計者でも簡単に風環境を確認できる
〔AIによる予測結果〕
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〔数値シミュレーションの結果〕
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AIにはBIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)などで設計した建物の形状データを入力する。周辺街区については市販の3次元地図データを利用する(資料:大成建設)
〔図2〕手戻りのリスクを大幅に減らせる
風環境計画のフロー。上は従来の流れ、下は大成建設のAIを活用した流れ。風環境評価後の設計変更や再検討に必要なコストを削減できる(資料:大成建設)
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 過去に同社が手掛けた市街地5km2分の数値シミュレーション結果から生成した約3200万枚の画像を教師データに、ディープラーニングを実施した。学習を済ませたAIに、設計中の建物とその周辺の市街地の形状を入力すると、歩行者への影響を評価するのに必要な地上1.5mでの予測結果を出力する。範囲を限定し、予測時間を短縮した。

 同社技術センター都市基盤技術研究部の中村良平副主任研究員は、「予測時間は入力も含めて数分。計画建物付近では精度の高い結果が得られた」と自信を見せる。

 一般に、環境影響評価(環境アセスメント)などの一環で実施する風洞実験には約2カ月、数値シミュレーションには1~2週間程度の期間を要する。

 せっかく時間をかけて建物を設計しても、風洞実験の段階になって強いビル風が発生すると分かれば、大幅な設計変更や実験のやり直しを余儀なくされる場合がある。

 同社技術センター都市基盤技術研究部の吉川優チームリーダーは、「風洞実験には1000万円ほどの費用がかかるケースもある。設計変更をすると工程にも大幅な遅れが生じる」と説明する。

 AIの活用によって、こうした手戻りのリスクを減らせる可能性がある。同社は今後、AIのモデルに改良を加えて予測精度の向上を図り、社内で設計支援ツールとして活用する考えだ。20年度以降の運用開始を目指す。

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