RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)とOCR(光学的文字認識)を組み合わせて紙文書とパソコンを扱う作業をどう効率化していくか。先進企業への取材で確実に成果を得るワザは7つあると分かった。今回は「効率よく読み取り結果を確かめる」ワザを紹介する。

本特集で紹介するOCRとRPAを生かす7つのワザ。今回は「ワザ7 効率よく読み取り結果を確かめる」を取り上げる
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ワザ7 効率よく読み取り結果を確かめる

 最後の第7のワザはOCRで読み取った結果を、業務担当者が効率よく確認できるようにするためのワザだ。紙文書の内容によっては、OCRで読み取った結果を業務担当者が厳密に確認しなくてもよいケースがある。アンケート用紙の自由記入欄に顧客が書いた文章をOCRで読み取る場合、厳密な作業が必要とは限らない。読み取り結果に多少の誤字があったとしても、業務担当者が読んで理解できればよいからだ。

 しかし、請求書に書かれた金額などを読み取る場合、話は別だ。OCRの読み取り精度が99%と高かったとしても、1%の誤りがあるならば、業務担当者が厳密に確認する必要が出てくる。読み取り結果が間違ったまま処理することが許されないからだ。そのため、OCRが読み取った結果が間違っていないかを、担当者が確認する手順を踏むことが欠かせない。ここで最後のワザである「効率よく読み取り結果を確かめる」が役立つ。

 このワザは2つの細かいワザに分けられる。1つは「業務担当者が読み取り結果を確認しやすくする」ワザ。もう1つは「RPAを使って読み取り結果の確認を自動化する」ワザだ。順に見ていこう。

システム画面と紙文書のレイアウトをそろえる

 業務担当者が読み取り結果を確認しやすくするワザを駆使している1社が、低温物流大手のニチレイロジグループだ。同社は顧客企業から毎月ファクシミリで届く数千件規模の配送依頼書の内容を、基幹系システムに入力する作業をOCRとRPAで自動化している。

 ファクシミリ文書の画像データをOCRソフトで読み取りテキストにして、RPAのソフトウエアロボット(ソフトロボ)が基幹系システムに入力する。ここまでの処理を自動で進めた後、業務担当者が基幹系システムの画面に入力されたデータが正しいかどうかを確認してから、そのデータを登録するようにしている。

 ニチレイロジグループはここで業務担当者がシステムに入力されたデータと、配送依頼書の内容が一致しているかどうかを確かめやすくする工夫を凝らす。基幹系システムの入力画面と、ファクシミリで届いた配送依頼書の画像データを、パソコンの大型ディスプレーの画面で左右に並べて表示させて、確かめるようにしているのだ。

 ここでさらに確かめやすくする工夫を施した。「配送依頼書のレイアウトを、基幹系システムのデータ入力画面とそろえることで、業務担当者が確認しやすいようにしている」とニチレイロジグループの輸配送事業会社、ロジスティクス・ネットワークでOCRとRPAの導入に携わる米沢愛理BPOセンター主任は明かす。

ニチレイロジグループの基幹系システムの画面(左)と配送依頼書の画像イメージ(右)。「集荷元」「配送先」などの入力欄など、画面と書類のレイアウトをそろえている
(出所:ニチレイロジグループ本社)
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 具体的には配送依頼書の「荷主」「集荷元」「配送先」などの配置と、基幹系システムの入力画面の配置をそろえているのだ。「基幹系システムの画面上にソフトロボが入力した集荷元の情報は、配送依頼書のどこに書かれてあるのかなどと、探す手間を減らせた。一連の取り組みで、新人の業務担当者もベテランと同じくらいのスピードで確認作業を進められるようになった」(米沢主任)。

 OCR製品のなかには、OCRが読み取った結果と、読み取る文書の画像を並べて確認しやすくする機能を備えるものが出てきている。例えば、AI insideのDX SuiteはAIが読み取ったデータと、対応する文書に書かれた文字の画像を切り出した上で、並べて表示させる画面を設けている。こうした機能を採用すると、確認作業が効率化できそうだ。

AI OCRクラウドサービス「DX Suite」が備える読み取り確認画面の例。画面右側に紙文書の画像と読み取り結果を並べて示すことで、ユーザーが確認しやすくしている
(出所:AI inside)
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読み取り結果をRPAに確認させる

 細かいワザのもう1つが、「RPAを使って読み取り結果の確認を自動化する」だ。もしシステム上に確認用のデータが蓄積されていたり、業務で使うシステムにデータのチェック機能があったりする場合、読み取り結果の確認をRPAで自動化できる。

 システムに蓄積したデータを読み取り結果の確認に役立てているのは、東京都の港区だ。コミュニティーバスの乗車券申請書の内容をAI OCRで読み取った後、読み取り結果が正しいかどうかをRPAで自動確認している。

 庁内システムには申請書を提出する区民の住所や氏名、生年月日のデータがすでに登録されている。これら既存のデータを、申請書に記入した内容やAI OCRで読み取った結果が正しいかどうかを確かめるのに役立てている。RPAのソフトロボは職員しかアクセスできないネットワーク上で、職員の監視下で動かすようにしている。

 申請書の読み取った結果のうち、住所や氏名、生年月日という3つのデータを、ソフトロボが庁内システムに入力して検索。その結果が1人に特定できれば読み取った内容が正しいとみなして、申請手続きのための処理をRPAで自動化している。

 もし検索結果が1人も出てこない場合、AI OCRで読み取った内容は間違っているとみなす。その場合、ソフトロボが専用のエラーリストに、申請書のデータを自動的に書き込んでおく。「職員は後でエラーリストを見て、リスト上の申請書だけを修正して入力し直せば済むようになった」と港区の総務部情報政策課情報政策担当の土谷愛氏は説明する。

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