RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)とOCR(光学的文字認識)を組み合わせて紙文書とパソコンを扱う作業をどう効率化していくか。先進企業への取材から、成果を得るワザは7つあると分かった。今回は「読み取る帳票を見直す」ワザを紹介する。

本特集で紹介するOCRとRPAを生かす7つのワザ。今回は「ワザ6 読み取る帳票を見直す」を取り上げる
[画像のクリックで拡大表示]

ワザ6 読み取る帳票を見直す

 第6のワザは「読み取る帳票を見直す」だ。読み取る紙文書の記入欄などを見直すことで、OCRの読み取り精度が上がる。東京都の港区や、LIXIL、住信SBIネット銀行、住宅ローンのアルヒといった多くの先進企業が取り組んでいる。

 港区は区内を走るコミュニティーバス「ちぃばす」を、高齢者や妊産婦らが無料または低料金で利用できるように専用の乗車券を交付している。区民からの申請は年2万5000件に上ることもあり、港区は2018年9月から申請書の受け付け処理を、AI(人工知能)を組み込んだOCRであるAI OCRと、RPAで効率化している。

 AI OCRで申請書を読み取るに当たり、乗車券を希望する区民に記入してもらう申請書を見直した。AI OCRで受け付け処理を自動化する以前は、高齢者向けや妊産婦向けなど複数種類の申請書を用意していた。これをAI OCRの導入を機に1種類に絞った。

 「AI OCRで読み取る場合、申請書ごとに読み取り設定をしていく必要がある。申請書の種類を減らせば、効率よく読み取り設定ができる」。港区の皆川浩総務部情報政策課ICT推進担当係長は絞った理由をこう説明する。

 申請書を1種類に絞った際、住所や電話番号、氏名やふりがなといった欄に下線を印刷し、申請する区民には線に沿って手書きで必要事項を記入してもらうようにした。複数種類あった申請書がいずれもそうなっていたからだ。

 しかし、下線の記入欄に手書きで文字を書いたものをAI OCRで認識させると、「下線を文字の一部と間違って認識したり、村という漢字を木と寸のように、2文字に分けて読み取ったりしてしまうことがあった」と皆川係長は振り返る。

東京都の港区がAI OCRの導入で直面した、読み取り対象の申請書に関する課題と解決策
(申請書の出所:港区)
[画像のクリックで拡大表示]

 そこでAI OCRが下線を文字の一部と認識したり、1文字の漢字を分解して認識したりしないよう、申込書の記入欄を見直した。下線の代わりに1文字ずつ書き込むための記入枠を印刷。区民には、枠内に1文字ずつ記入してもらうようにした。これで、下線の場合に起こった誤認識をなくせたという。

手書きで記入する欄を広げて書きやすく

 LIXILや住信SBIネット銀行も、読み取る文書の手書き記入欄を見直してOCRが正しく読み取れるようにした。LIXILは業務担当者が製品の不具合の内容について書き込む文書をAI OCRで読み取る際、記入のやり方を見直した。

 従来は「加工不良」「キズ」といった項目を文書に印刷しておき、業務担当者にペンなどで丸を付けてもらうようにしていた。AI OCRはどの項目に丸が付いているかを認識できるものの、「付けた丸が他の項目に重なるような書き方をしていると、OCRが正しく認識しないことがあった」とLIXILのIT部門システムインフラ部IT次世代化推進グループの高橋裕司氏は話す。

AI OCRで読み取りやすくするため、LIXILが見直した紙文書の記入欄の例。項目に丸を付けるやり方を数字記入に変えたり、自由記入欄を広く取ったりした
(出所:LIXIL)
[画像のクリックで拡大表示]

 そこで「1.加工不良」「2.キズ」などと項目に番号を割り振って文書に印刷しておき、業務担当者にはその番号を、新たに設けた枠内に記入してもらうことにした。AI OCRにその数字を読み取らせるようにしたことで、正しく読み取れるようになったという。

この先は有料会員の登録が必要です。「日経コンピュータ」定期購読者もログインしてお読みいただけます。今なら有料会員(月額プラン)が12月末まで無料!

日経 xTECHには有料記事(有料会員向けまたは定期購読者向け)、無料記事(登録会員向け)、フリー記事(誰でも閲覧可能)があります。有料記事でも、登録会員向け配信期間は登録会員への登録が必要な場合があります。有料会員と登録会員に関するFAQはこちら