RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)でパソコン作業の自動化を進める企業が続々とOCR(光学的文字認識)の導入も進めている。RPAとOCRを組み合わせて導入するのはなぜか。各社の取り組みから浮かび上がってきたRPA+OCR導入の成果を確実に得るワザとともに紹介する。

 「全社規模でRPAの導入を進めるため、適用できる業務の掘り起こしを進めてきた。そのなかで紙の伝票を読み取ってシステムに入力するパソコン作業を自動化できないかという声が業務の現場から多く上がってきた」。大丸松坂屋百貨店やパルコなどを運営するJ.フロント リテイリングの石井勝也業務統括部シェアードサービス推進部スタッフはこう明かす。

 同社は2018年春、社内にRPAの専門組織を立ち上げて社内普及を進めてきた。現場の声を受けて、紙文書をスキャンしたデータの内容を読み取ってテキストデータを作成するOCRの導入を進めている。2018年末から導入の検討を始めて、開発をスタート。2019年9月、RPAと組み合わせて処理を自動化した。

 具体的にはグループ会社の商社が取引先からファクシミリで受け取る受注伝票の内容を、OCRで読み取ってテキストデータを作成する。そのテキストデータをRPAツールで開発したソフトウエアロボット(ソフトロボ)が基幹システムに入力していく。OCRはPFUが提供するクラウドサービス「PFU Smart Capture Service(PSCS)」を採用した。

 RPAの導入に合わせてOCRの活用に乗り出す大手企業は他にもある。2018年春からRPAの導入を進めてきた建材大手、LIXILもそうした企業の1社だ。2018年8月にOCRの導入を始めた。「RPAが社内で広まっていくなかで、現場に残る紙文書の内容をシステムに登録していく作業を自動化したいという声が高まってきた」とLIXILのIT部門システムインフラ部IT次世代化推進グループの高橋裕司氏は話す。

 そこでLIXILはAI insideのAI(人工知能)を組み込んだOCRサービス「DX Suite」を採用した。DX Suiteは手書き文字の文書を読み取りの対象にできる。これまでに30部門以上がRPAと組み合わせて現場のパソコン作業を自動化した。

読み取り精度が急激に高まる

 OCRをRPAと組み合わせてパソコン作業の効率化を進める企業はこのほか、アフラック生命保険や三菱重工業、低温物流大手のニチレイロジグループなど枚挙にいとまがない。RPAとOCRの相性は抜群といったところだ。なぜだろうか。

 その理由をアフラック生命保険の歌田皇一郎デリバリーコーディネーション部IT開発プロモーション課長は次のように話す。「2018年夏ごろ、AI OCRによる手書き文字の読み取り精度が急激に向上して、業務担当者の作業を代替できるようになった」。同社は2017年からAIを組み込んだOCRであるAI OCRを導入し、読み取り精度の向上を肌で感じてきた。

 こうした技術の進化を踏まえて、アフラック生命保険は2019年に入ってAI OCRの業務適用を本格化させた。2019年6月には、顧客から届く、契約変更の手続きに関する手書きの請求書を受け付ける処理について、AI OCRサービスであるDX SuiteとRPAツールの「Blue Prism」を組み合わせて一部、効率化した。これまでは人手だと3~4分ほどかかっていた請求書の内容を確認する作業が3秒で終わる成果を得ている。

 アフラック生命保険はOCRを導入して成果を得るため、様々な工夫を凝らしている。同社の滝沢一史契約保全部業務課課長は「人が見ても読めないような文字などもある。そのため、AI OCRがすべての手書き文字を正しく読み取れるとは限らない。読み取りミスやデータ入力の間違いが許されない業務で適用するため、AI OCRで読み取るだけでなく、人手でもパンチ入力したり、読み取り結果とパンチ入力の結果を確認したりするなど、工夫を凝らしている」と話す。

 アフラック生命保険のようにOCRをRPAと組み合わせて導入し、成果を得るには、様々な工夫、すなわちワザがありそうだ。そのワザを探るため、OCRをRPAと組み合わせて効率化を進めている先進企業9社を取材。するとOCRの選定から業務への適用まで多岐にわたる7つのワザが浮かび上がってきた。本特集ではこれらを紹介する。

本特集で紹介するOCRとRPAを生かす7つのワザ。今回は「ワザ1 できるだけ自動化する」を取り上げる
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ワザ1 できるだけ自動化する

 最初のワザは人手をなるべくかけずに「できるだけ自動化する」ことだ。具体的には現場担当者の手を煩わせないようにOCRとRPAを連携させて、できるだけ人手を介さずに処理を自動化する。パソコンによる作業時間そのものを減らせたり、それまで現場担当者がパソコンなどにつきっきりでいる状況をなくせたりできる。

 パソコンによる作業時間を削減したのが、低温物流大手のニチレイロジグループだ。2018年1月に顧客企業からファクシミリで届く運送依頼書の内容を、パナソニック ソリューションテクノロジーのOCRソフト「帳票OCR」で読み取ったあと、RPAツールの「UiPath」で開発したソフトロボで基幹系システムに入力するようにした。月に1万2000件届く書類の約3割をこの仕組みで処理している。

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