売上高の計上に関する新たな会計基準がITベンダーの決算遅れを招く恐れが出てきた。2021年4月以降に始まる事業年度から新たな会計基準として「収益認識基準に関する会計基準(以下、収益認識基準)」が適用される。適用対象は約3700社の上場企業を中心に有価証券報告書を作成したり会計監査を受けたりしている企業である。

 その中でも受託ソフトウエア開発を主な業務とするITベンダーは大きな影響を受ける。これまで受託開発の売り上げを計上する際に基準としてきた「工事契約に関する会計基準(以下、工事進行基準)」を廃止し、収益認識基準に変更しなくてはいけないからだ。収益認識基準の適用対象となるITベンダーは売り上げの計上方法に関して見直しを避けられない。

 収益認識基準の適用は容易ではない。同基準が対象とする範囲が広いためだ。

 現行の工事進行基準はその名の通り、ビルの建設工事やソフトウエアの開発など工期の長いプロジェクト型の事業について会計処理の方法を定めている。一方、収益認識基準は建設やソフトウエア開発に限らず、様々な企業にサービスや製品単位での売り上げの計上を求めている。そのため、基準の記載が工事進行基準よりも抽象的で、受託開発に当てはめにくい。

JISAが指針公表に乗り出す

 

  「ITベンダーが収益認識基準を適用するための準備にかかる負担は非常に大きい」――。ITベンダーの業界団体である情報サービス産業協会(JISA)は2019年9月、収益認識基準に関する実務指針を公表した。

 指針を作成した理由について、JISAの田中岳彦企画調査部次長は次のように話す。「経理部員を複数人抱えるITベンダーならば対応可能かもしれない。しかし経理に十分な人数が割けない2次請けや3次請けのITベンダーの中には、収益認識基準の存在すら知らない企業があり、十分に準備できない可能性がある」。

 JISAが公表した実務指針は「『収益認識に関する会計基準』を巡る論点及び実務対応」である。収益認識基準を適用する際に、システム開発や保守サービスなどの売上高をどう計上すべきかを具体的に解説している。

 「ポイントは基準の解釈にとどまらず、実際に経理の現場で実施すべきアクションにまで踏み込んで記載した点だ」と田中次長は強調する。JISAの実施指針は収益認識基準の中からシステム開発において解釈や実行が難しい項目について、現場の実態に合わせて36ページを割いて説明している。

 収益認識基準の特徴は顧客と交わす契約書などの単位ではなく、顧客に提供するサービスや製品単位での売り上げ計上を求めている点だ。契約に含まれるサービスや製品を「履行義務」と呼び、履行義務が終了するごとに売り上げを計上する。収益認識基準では売り上げの計上単位を明らかにし、売上高計上のプロセスを5ステップで進めるように定めている。

収益認識基準の考え方。5ステップで売上高を計算して計上する
(出所:情報サービス産業協会)
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 システム開発の場合、1つの契約の中に複数のサポートサービスや運用保守サービスを含んでいたり、ソフトウエアの開発とハードウエアの納入を一体で契約したりする。収益認識基準では契約の中身を見ながら「履行義務」を抽出するという新しい作業が必要となる。

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