ヤフーがZOZO買収で強化するのはEC(電子商取引)事業にとどまらない。同社が新たな経営資源と位置づける、様々なデータを生かした「データドリブン経営」の推進にも大きく貢献しそうだ。

 「私は大学生まで超テレビっ子で、以降は典型的なネットユーザーだった。その世代と共に育ったヤフーの利用者は高齢になっている面がある」(ヤフーの川辺健太郎社長)。米アマゾン・ドット・コム(Amazon.com)や楽天といった既存の競合大手だけでなく、フリマアプリのメルカリなど若年層に強い新興勢の台頭も著しい。

 利用者層の高齢化に直面するヤフーにとって、ZOZOの主要顧客である若い女性層のファッション商品購買履歴はまさに「お宝」。信用スコアリングの強化に向けても、購買履歴データは外せない。購買額や購買頻度といったデータを分析すれば利用者の経済力を推測でき、金融や各種のサービス優遇に生かせるようになるからだ。

 ヤフーは利用者の同意に基づきグループ企業へデータを提供できるよう、プライバシーポリシーを改定すると発表したばかり。広告とECに続く事業の柱として、データ活用をいっそう推し進めていく構えだ。

購買履歴データは「シグナルが強い」

 「ECの購入者数が爆増する。ヤフーやソフトバンクの総力をもって、どんどん送客していきたい」。2019年9月12日、ZOZO買収の発表会見の席上でヤフーの川辺社長は、EC事業の相乗効果に期待を示した。2018年度のEC事業の取扱高はヤフーが2兆3442億円、ZOZOが3113億円。単純合算で2兆6500億円に達する。さらに「(資本業務提携による)シナジーを効かせれば国内ECナンバーワンが視野に入る」(同)。

ヤフーとZOZOの利用者属性の比較
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 ヤフーはZOZO買収でEC事業の売り上げ増に加え、これまで手薄だった分野のデータを活用する道が開けた。若年女性層の購買履歴データだ。ヤフーのネット通販やオークションサービス「ヤフオク!」の主要顧客層は30~40代の男性に対し、ZOZOが運営するファッション通販サイト「ZOZOTOWN」の顧客層は20~30代の女性が中心。「互いのユーザー属性は非常に補完的」(川辺社長)な関係にある。

 さらに川辺社長はデータ活用戦略の強化方針として、購買履歴データは「検索データと同じくらいシグナルが強い。ユーザーの同意を得たうえで、グループ全体でデータを便益に変えていきたい」とした。シグナルとは利用者の意図や行動の兆候を示し、同社がデータ活用戦略を説明する際に繰り返し使う言い回しだ。ZOZOTOWNの購買履歴データを、ヤフーの中核サービスであるネット検索のデータと同等の価値があると評価したわけだ。

 現在の収益の柱である広告と、ZOZO買収で大きく強化するEC。同社はこれらに加えてデータ活用を「新たな挑戦領域」と位置づけ、広告とECに次ぐ第3の柱に育てる方針を打ち出している。象徴的な取り組みが、10月にも始める企業向けデータ活用支援サービス「DATA FOREST」だ。自社のビッグデータと人工知能(AI)技術を使って新規事業創出を支援する。製造業における新商品企画や需要予測の精度向上、公共交通機関の渋滞緩和、自治体の防災活動など幅広い分野に同社のデータを生かしていく。

 2019年6月に参入した信用スコアリングサービス「Yahoo!スコア」も、データ活用事業の一環と言える。利用データを基に算出した数値で各種サービスを優遇する。

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