SEにとって重要な思考力を効果的に伸ばす方法がある。本特集では日経ITプロフェッショナルの過去記事を再編集した。「悩む」と「考える」の違い、考えることの本質を理解し、ロジックツリーやブレーンストーミングなどの「思考法」をマスターしよう。

 SE向けの思考法のセミナーで講師を務めると、「思考法はいくつか知っているが、仕事には使っていない」と言う受講者が少なからずいる。理由を聞くと、たいていは「どう使ったらよいか分からない」「試してみたけれどうまくいかなかった」といった答えが返ってくる。

 筆者からすれば、それは不思議ではない。思考法を実践で生かすのは、決して簡単ではないからだ。

 「考える」という行為は極めて自由度が高く、その方法は様々である。誤解を恐れずに言うと、「考える」という行為に決まりきったやり方があると期待するのが、そもそも無理というものだ。

 また人によって知識や経験の内容は千差万別。必然的にその人に合った「考える」方法も異なる。さらに言えば、現場で起きる様々な問題を必ず解決できるという万能な“解法”など、あるはずがない。

 だから、しゃくし定規に思考法を使おうとしても効果がない。思考法は、時々に応じて使い分けたり組み合わせたりアレンジしたりする必要がある。

 では最適な思考法を選び出し、使いこなすにはどうすればいいのか。そのためには、まず思考そのものの基本的な仕組みを知っておく必要がある。それを知らなければ、様々な思考法がなぜ存在するのか、それぞれの目的が何なのかが分からないからだ。

 思考法の大きな柱として「発想」と「構造化」がある。一つひとつの思考法を学ぶ前に、まずは発想と構造化の本質を理解しよう。それができれば思考法の習得が容易になるし、場数を踏むことで実践的な使い方が徐々に身に付いていく。

潜在意識から情報を取り出す

 発想について説明しよう。発想というと、それまで思い付かなかった新しいアイデアをゼロから生み出すことだと思うかもしれない。そういう人は、「発想力は生まれ持ったセンス」だと片付けてしまっているのではないだろうか。

 しかし、それは誤りである。筆者は脳生理学や認知心理学の専門家ではないが、思考法について様々な文献・書籍を読み、セミナーで思考法を教えて効果を上げてきた経験から、発想という行為を次のように捉えている。

 人は誰しも、潜在意識に膨大な情報を蓄積している。いわば「無意識の倉庫」があるのだ。何かを考える際に、そこに入っている情報を総動員して利用できれば理想的である。

 しかし残念ながら、人間の脳はそれができる仕組みになっていない。そこで、無意識の倉庫にある情報を引っ張り出して意識の俎上(そじょう)に載せ、利用できる状態にしなければならない。その作業こそが「発想」である。

発想することの本質
発想することの本質は、本や文献を調べたりほかの人に聞いたりするのと同じく、あるテーマに関する情報の量を増やすことにある。自分の知識や経験が及ばない領域のことは発想できない。つまり知識や経験の量で、発想の限界が決まる(出所:アイデアクラフトの資料を基に編集部で作成)
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 これを表したのが上の図だ。真ん中にある領域が、初めから認識できている情報の範囲だ。それを潜在意識の領域まで広げることが発想である。いわば「意識のレーダーの探索範囲を広げる」ことと言い換えられる。