SEにとって重要な思考力を効果的に伸ばす方法がある。本特集では日経ITプロフェッショナルの過去記事を再編集した。「悩む」と「考える」の違い、考えることの本質を理解し、ロジックツリーやブレーンストーミングなどの「思考法」をマスターしよう。

 「前任者がそうしていたなどという理由が通ると思っているのか。自分で考えて根拠を示せ」──。ITコンサルティング会社に勤めるAさんは上司に部署の予算を説明した際、このように厳しく叱られたことがある。Aさんは「仕事への姿勢が甘かった」と振り返り、こうつぶやいた。「過去のやり方を無批判に踏襲するのではなく自分の頭でとことん考えなければ、適切な手を打てない場面が増えている」。

 SE(システムエンジニア)にとって考える力(思考力)の重要性はますます高まっている。仕事の様々な局面において、従来のやり方が通用しなくなっているからだ。

 背景には2つの大きな要因がある。第1は、ビジネス環境やITの変化が激しくなっていることだ。IT企業やユーザー企業を取り巻くビジネス環境、ユーザー企業のシステムへのニーズ、そして次々に登場する新しいIT──。こうした変化への対応のスピードが、IT企業の明暗、そしてSE自身の価値を左右する。

ITエンジニアにとって「考える力」がますます重要になっている背景
ITやビジネス環境の変化、システムの複雑化が進むなか、ITエンジニアの仕事は従来のやり方では通用しなくなっている。変化と複雑化に対応するには「考える力」を伸ばすことが不可欠だ
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 第2は、システムの複雑化が進んでいることである。例えば1つのシステムを1つの部門だけが使うのは過去の話。在庫管理システムなら物流、生産、営業、経理などの社内部門に加えて、取引先や顧客も一部の機能を利用できるようにするケースが増えている。当然、それらの利用者ごとに使い勝手を高める機能が必要になる。

 しかもますます厳しくなる予算や納期、人員に対処するため、様々な工夫をしなければならない。つまり日常的に、仕事のやり方を一から考える必要が生じているわけだ。

 これは日本のITエンジニアの宿命といえる。「マニュアル化できる仕事なら人件費の安い海外でやればよい。どうしたらよいか簡単には分からない仕事をするから、付加価値が生まれる」(ITコンサルティング会社の役員Bさん)からだ。

「悩む」と「考える」は別もの

 ではどうすればいいのか。考える力を身に付ける王道は存在しないが、効果的にその力を伸ばす方法はある。第一歩は、考える手順を理解した上で日々実践することだ。

 こんな経験はないだろうか。考えても考えても、ろくな答えが浮かばない。見かねて上司がアドバイスをくれた。教えてくれたのは答えではなく「こう考えてみなさい」という手順。その手順に従って考え直してみると、何を分かっていないのかが見えてきた。突き詰めていくと、ついに「これだ」という答えにたどり着いた……。

 アドバイスを受ける前と受けた後で変わったことは1つ。考える手順を知ったことだ。それによって「悩む」という状態から抜け出し、正しく「考える」ことができた。