2015年以降、ベンチャーキャピタル(VC)のファンドへの投資を通じてベンチャー企業とのオープンイノベーション(社外の技術やアイデアを取り入れてイノベーションを生み出す手法)に取り組んできた清水建設。500億円を投じて東京都江東区潮見にオープンイノベーションの拠点を整備し、米シリコンバレーの事務所と両輪で研究開発を加速する青写真を描く。ベンチャー投資を担当してきた同社次世代リサーチセンターの平田芳己所長に、今後の展開を聞いた。

清水建設次世代リサーチセンター所長の平田芳己執行役員(写真:日経アーキテクチュア)
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これまでにユーグレナ(東京都港区)などが運営するリアルテックファンドと、米シリコンバレーのDNXベンチャーズのファンドに、まとまった額を投資してきました。

 投資額はリアルテックファンドに10億円、DNXベンチャーズに1000万ドル(約11億円)です。ベンチャー投資を通じて、人手不足に代表される建設業の課題解決を図り、さらには新たなビジネスの種を見つけたい。当社は2030年に目指す姿を「スマートイノベーションカンパニー」と表現しています。建設事業を強化しつつ、それ以外の事業でも稼いでいくうえで、イノベーションの役割は非常に大きいと考えています。

 ベンチャー投資をビジネスとして考える投資家も多いですが、我々は投資で利益を上げることを目的とはしていません。経営陣からも、明確にそのように言われています。もちろん担当者としては、何十億円というお金を投じているのですから、回収するつもりですが(笑)。

 今、お話ししたように、これまで我々はVCのファンドに対して10億円単位で投資をしてきましたが、今後はコーポレート・ベンチャー・キャピタル(CVC)のような取り組みに、軸足を移していきたいと思っています。
(編集部注:CVCとは、投資を本業としない事業会社が自らベンチャーに投資するために設立した組織のこと)

 我々が注力している分野は様々ですが、やはり第一が「建設」です。これまで投資してきた案件をよく分析してみると、我々が本当に資金を投じたいと考えている企業に対して十分な投資ができていない。VCを通じた投資、つまりリミテッド・パートナー(LP)としての投資だと限界があります。本当に清水建設が関わりたいと考える企業にきちんとお金が流れるようにするためには、やはりCVC的な活動が必要です。社内でもそのように問題提起しています。

投資を専門とする新会社をつくるということでしょうか。

 そこは決まっていません。そこまでもっていくには、やはりきちんと成果を出していく必要があると思いますので。

確かにリアルテックファンドの投資先を見ても、「建設」に関係するベンチャーはほんの一部ですね。

 おっしゃる通りです。それでいいのか、と。ただし、VCとのお付き合いをやめるわけではありません。本当に色々と勉強になっていますから。

 例えば情報のチャンネル。彼らは我々にないネットワークを持っていますので、個別に情報をもらってベンチャーにコンタクトを取ることは多々あります。企業のバリュエーション(価値評価)の手法を学べるのも利点です。我々はLP投資家ですから、どこに投資するかという意思決定には関与できませんが、技術や会社を評価する部分では、当社のエンジニアが協力させてもらうこともある。

 シリコンバレーではDNXベンチャーズに社員を1人送り込んで、2年間にわたって一緒に行動させてもらった。ベンチャーのバリュエーションやデューデリジェンスを含め、多くの知見を得ることができました。

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