建築生産のデジタル化と、新事業の創出をテーマに、ベンチャー企業とのオープンイノベーション(社外の技術やアイデアを取り入れてイノベーションを生み出す手法)に取り組む竹中工務店。当初は「いい相手を見つけてデートにこぎ着けたのに、会話が弾まないような状態」に陥っていたという。協業の悩みをどのように克服したのか。同社技術本部長の村上陸太執行役員に聞いた。

竹中工務店技術本部長の村上陸太執行役員(写真:日経アーキテクチュア)
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2018年は研究開発に約83億円を投じました。本業の調子が良いと、研究開発にも力が入りますね。

 実証実験をやるにしても、現場が協力的です。ロボットのような全く新しい技術にも、所長が興味を持って取り組んでくれるので助かります。これが、赤字をどうにかして黒字に持っていこうという厳しい状況で「ロボットを使いませんか」なんて持ち掛けると「アホか!」と怒られそうだけれど(笑)。一方で、本業の調子が良いときは、本当に切羽詰まった課題が上がってきにくい面もありますが。

 新しい技術を開発すると、現場からは必ずと言っていいほど「頼んだものと違うじゃないか」と指摘されます。一方、開発している側は「言われた通りに開発した」と。こんなふうに、うまくいかない部分はあります。でも、そんなものだとも思います。意見をぶつけ合ううちに、だんだんと良くなっていきますから。

 ロボットについて言えば、人間の動きをそのままロボットで置き換えるのにはやはり限界があります。うまくいっているロボットは、掃除ロボットや墨出しロボットのように機能を絞っている。ロボットは単純な作業を繰り返すのが得意ですから。だから、むしろロボットでつくることを前提に建築を設計するような取り組みも、進めていかなければなりません。極端に言えば、柱を全て同じ断面にするとか。

研究開発はどのように進めていますか。

 技術本部と技術研究所が二人三脚で進めています。技術本部が戦略や計画を立て、技術研究所が開発を実施する。その後、技術本部が成果を権利化して活用する。そんなイメージですね。もちろん、具体的な開発プロジェクトを進める際は、ニーズを持っている設計本部や生産本部との混成チームで取り組みます。

 研究開発の進め方は、ベンチャー企業のやり方を参考にしています。ベンチャーはフットワークが軽いので、すぐに「試してみませんか」となります。我々も、これまでのように3年計画を立てて開発を始めるのではなく、とりあえずつくってみることにしました。例えば、ゴミ掃除ロボットのようなものを試作して、現場に使ってもらう。使ってもらうと意見が出てくるので、それを踏まえて改良していく。その方が、開発スピードは格段に上がります。

 これまではパワーポイントで、ものすごく詳細な資料をつくり込んでいました。でも、もうやめることにしました。何だかきれいな言葉が並んでいるだけで、結局、内容が分からないようなことが多いですからね。

 新しい技術のPoC(Proof of Concept、概念実証)については、メルセデス・ベンツ日本と当社による、未来のライフスタイルの体験施設「EQ House」で集中的に実施しています。

EQ Houseでは、墨出しロボットの検証や、MR(複合現実)による完了検査などにも取り組んだそうですが。

 「EQ House」は2年間の仮設の建物です。ここであらゆる技術を試してみようと。ただ、今はここだけではなくて、各本支店でもPoCを進めています。まずは試してみる、という開発の進め方を、制度化しようとしているのです。PoCの段取りをするリーダーを各本支店に置き、「このロボットは名古屋支店で実験しようか」「今回は東京本店でやるから見に来てほしい」などと話し合っています。

「EQ House」の外観。2019年3月に公開した。設計にはコンピュテーショナルデザインを採用した(写真:日経アーキテクチュア)
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