社会実装を急ぐために、自前主義はあきらめる――。前田建設工業はベンチャー企業とのオープンイノベーション(社外の技術やアイデアを取り入れてイノベーションを生み出す手法)をいち早く打ち出したゼネコンだ。110億円を投じて茨城県取手市に建設したICI総合センターを、その拠点と位置付ける。同社ICI総合センター長の三島徹也執行役員に、研究開発の方針やオープンイノベーションについて聞いた。

前田建設工業ICI総合センター長の三島徹也執行役員(写真:日経アーキテクチュア)
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2019年2月に開所した技術研究所「ICI総合センター ICIラボ」では、オープンイノベーションを前面に打ち出しました。思い切った取り組みですね。

 様々な業種の大企業がオープンイノベーションに取り組んでいますが、よく見ると、研究施設とは別に拠点を設置するケースが多い。やはり、研究者には専門家としてのプライドがありますから、研究所を完全に社外に開くことによるハレーションを恐れる企業が多いのかもしれません。お客さんを案内すると、「2つが合体しているのはここぐらい。まさにオープンなR&D(研究開発)ですね」などと、褒めていただくことが多いです。

 我々としては、イノベーションを生み出したらすぐにそれを研究開発で使いたいと考えているので、とりわけ意識せずに、オープンイノベーションの拠点と研究施設を一体化しました。

 まあ、当社のリソースが限られているという事情もありますが(笑)。「我々には、ここしかない」という思いで、魂を込めてやっております。他社がまねをしようと考えても、魂まではまねできないだろうと自負しています。

いつ頃からセンターの構想を練り始めたのですか。

 4、5年前に遡るでしょうか。当社の研究所は東京・練馬にあったのですが、築50年近くになりますし、手狭になっていました。でも、周囲は住宅街なので拡張するのは難しい。

 それに、建設業界は今でこそ景気が良いですが、10年ほど前は「冬の時代」でしたから、研究所の活動は停滞気味になっていました。停滞感を打ち破るためにも何かアクションを起こすべきだと、当時の技術研究所長で、今は当社の研究開発のトップを務める大川尚哉取締役が役員会で提起し、大川と私で建て替えも含めた具体的な検討を始めたのです。

その過程で、オープンイノベーションにたどり着いたということでしょうか。

 当時の建設業界に、オープンイノベーションという言葉はほとんど浸透していなかった。ただ、例えば自動車や電機などの他業種では、少しずつオープンイノベーションという言葉を見かけるようになっていました。「これからは建設業の研究開発にもオープンイノベーションが必要になってくる」。直感的に、そのように思ったのです。

 その時はオープンイノベーションに関して深い知識を持っていたわけではありませんが、直感に従って、オープンイノベーションをどのように具現化していこうか、手探りで検討を始めました。

前田建設工業のICI総合センター。ICIは「Incubation」、「Cultivation」、「Innovation」の頭文字(写真:前田建設工業)
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