インバウンド向けの個性的なホテルが日本に少ないと考える香港の投資家が東京・築地のポテンシャルに目を向け、デザイン重視のホテルを開業した。日本文化の体験をテーマに、ビジネスホテルの計画を覆して臨んだものだ。

 東京・築地に4月、31室のホテル「TSUKI(ツキ)」が開業した。銀座まで徒歩圏ながら、一帯にはマンションや中規模オフィス、飲食店舗などが混在する。かつてあった中央卸売市場の知名度もあり、外国人観光客にはよく知られているエリアだ。

 事業主である香港CHESHUNT(チェスハント)社のキンマン・チン氏は、「昼と夜で全く表情の変わる街。また、日本的な伝統と文化の存在を感じさせる」と評する。進行中のホテル事業に投資を決めた同氏は、着工に差し掛かっていたビジネスホテルの計画を見直し、築地のポテンシャルを生かせるデザイン重視のホテルに転換を決めた。そして新たに、デザイン監修者として、虎尾亮太(虎尾+謝建築設計代表)、針谷將史(針谷將史建築設計事務所代表)、小林麻美(moca design(モカ デザイン)代表)の各氏を起用した。

 小規模な施設ならではの親密さを生かし、日本的な趣向の空間とサービスを提供する。その象徴が、2階の2つの貸し切り風呂と、1階のバーカウンターの存在だ〔写真1図12〕。貸し切り風呂では、ヒノキの浴槽に浸かり、日本ならではのゆったりとした入浴を体験できる。日本酒バーは外部の客も利用可能で、同時にホテルのゲストラウンジも兼ねる。大きなコの字形のカウンターでは、相席によって他の客との交流を促す。

〔写真1〕「バーカウンター」で出迎える
1階の入ってすぐの場所に日本酒バーがある。手前側がエントランスからフロントへの動線。バーらしい親密な雰囲気をつくるため、通路と逆側の天井を下げている。名栗(なぐり)加工のように見えるカウンターの堀り跡はNCルーターによるもの(写真:山本 育憲)
[画像のクリックで拡大表示]
日本らしさ伝える空間で迎える
[画像のクリックで拡大表示]

〔図1〕特注ユニットバスによる貸し切り風呂
2階にある貸し切り風呂「湯屋」。廊下突き当たりの開口部側にライブラリーとラウンジソファを置き、湯上がり処(どころ)とした。屋根風の天井や掛け流しを彷彿させるオーバーフローのある檜浴槽など、上質な日本風呂としている。工期上、防水工事が難しいため、特注のユニットバスを採用した

〔図2〕他者と交流を促すセミパブリックなバー
右の写真は、エントランスからフロントまで見通した様子。ピロティ部では緑の坪庭が迎える。さらに進んでアプローチの左手に「TABLE TSUKI」がある。独立した店舗として外部の客も利用できる

(写真:山本 育憲)

 元のビジネスホテルの計画から転じるに当たって、客室数を半減させて1部屋ごとの面積を広げるなどして付加価値を高める方向に練り直した。「基礎工事が終わって杭を打つ段階から関わった。躯体はいっさい変更せず、原設計の建物をリノベーションするような考え方で臨んだ」と虎尾氏は語る。

この先は有料会員の登録が必要です。有料会員(月額プラン)は初月無料!

日経 xTECHには有料記事(有料会員向けまたは定期購読者向け)、無料記事(登録会員向け)、フリー記事(誰でも閲覧可能)があります。有料記事でも、登録会員向け配信期間は登録会員への登録が必要な場合があります。有料会員と登録会員に関するFAQはこちら