「GAFA」をはじめとした世界主要企業が推進する映像符号化方式「AV1(AOMedia Video 1)」。その台頭を受けて、現行の国際標準規格「H.265/HEVC(High Efficiency Video Coding)」を立ち上げた企業や団体は、特許料が高いことや特許権利者団体が乱立する課題の解決に向けて動き始めた。代表例が、「Media Coding Industry Forum(MC-IF)」の新設である(図1)。

 最大の目的は、4つも特許権利者団体が乱立することで煩雑な手続きを簡単にして、特許料を抑えることである。4団体の統一を目指す議論もあるようだ(図2)。特許権利者の1社で符号化技術に関わる技術者は、「どうにかしないといけない」と危機感をあらわにする。

図1 特許団体統一に議論始まる
H.265/HEVCの特許ライセンスなどについて議論する「Media Coding Industry Forum(MC-IF)」が発足し、特許団体の統一に動き始めた。H.265の特許団体から多く参加するほか、AOMメンバーも加わる。
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図2 H.265では特許権利者団体が乱立
H.265の特許団体は複数に分裂しており、計4つの団体が有償ライセンスを提供している。利用者は、製品開発時に複数の団体と契約する必要があり、手続きの煩雑さから導入を見合わせる動きもある。
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権利者急増で特許団体乱立

 なぜH.265は泥沼と言える状況に陥ったのか。背景に、権利者の急増がある。計算機の性能が向上し、かつては資金力のある大手企業ばかりが手掛けていた映像符号化技術を、中小企業や新興企業が開発しやすくなった。H.265の必須技術の特許を保有する主な権利者数だけでも約70~80社に達し、先代規格の「H.264/MPEG-4 AVC(Advanced Video Coding)」の約2倍である。

 権利者が増えればライセンス条件などで合意しにくくなるのは当然だ。「権利者と利用者の双方の公平なライセンス料に関して、権利者間で合意できなかった」(H.265の権利者団体の1つであるHEVCアドバンス日本代表で弁理士の関浩徳氏)。

 H.265の権利者の多くは、かつて成功を収めた「MPEG-2」の再来を夢見たのだろう。MPEG-2の場合、早期に比較的安価で使いやすいライセンス条件を打ち出したことで普及した。特許権利者も大きな利益を上げたとされる。H.265の特許を保有するある企業の映像符号化技術者は「高収益だったMPEG-2の夢を追い、権利者の思惑が対立し、複数の団体ができてしまった」と悔やむ。

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