映像符号化方式(動画コーデック)の主役へと駆け上がる「AV1(AOMedia Video 1)」。現行規格「H.265/HEVC(High Efficiency Video Coding)」と比べて優れているのは、特許料を無料にする「ロイヤルティーフリー」の仕組みだけではない。性能面で優位に立つ点が多い(表1)。

表1 AV1の性能はH.265をしのぐ
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 最も重要な指標である動画圧縮率では、AV1の方が高い。AV1を開発した米国の非営利団体アライアンス・フォー・オープン・メディア(AOM)が公開している標準の符号化アルゴリズムを、符号化技術に関わるある企業が試したところ、AV1の動画圧縮率はH.265に比べて21%高かった。圧縮率が向上すれば、同ビットレートで比較した際の画質も良くなる。

 加えてAV1の対応機器数はまだ少ないが増えつつあり、近い将来に対応機器数でAV1がH.265を上回りそうだ。AV1対応のSoC(System on a Chip)などのハードウエア開発が急速に進んでいる。

 実のところインターネット上では既にAV1がH.265を上回って普及している。米グーグル(Google)の「Chrome」や米モジラ(Mozilla)の「Firefox」といった主要ブラウザーはAV1に対応し、H.265に対応しない。ブラウザーの利用状況などを調べられるWebサイト「Can I use」によれば、ブラウザーの約30%でAV1を再生できる。一方で、H.265は約16%にとどまる。

 一方で、処理時間ではAV1の方がH.265よりも長くなる。評価実験では、符号化処理(エンコード)でH.265の約6.7倍、復号処理(デコード)で約2.5倍の時間が必要になった。ただし各社の開発が進んでAV1の実行環境が整っていくと、処理時間は十分に短縮できるだろう。

地道な効率向上を重ねたAV1

 AV1やH.265における符号化処理機能(エンコーダー)の構成の根幹は似ている。「動き補償」や「DCT(discrete cosine transform:離散コサイン変換)」などのアルゴリズムで、予測や変換、量子化、符号割り当ての処理を実行する。

 AV1の性能がH.265に比べて優れるのは、革新的な技術を用いたわけではなく、各処理で地道に効率を高めてきたからだ。AV1はH.265に比べて、符号化アルゴリズムの数を増やしている(表2)。

表2 AV1とH.265の技術面の主な違い
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