ピーク時で約8000人が関わった世界最大級のシステム開発案件だけに、みずほフィナンシャルグループ(FG)はプロジェクト管理に特に気を配った。傘下の銀行やシステム開発会社に横ぐしを刺す横断組織を設け、会社や部門間の利害対立を調整し、全体最適の視点で意思決定を下した。

 プロジェクトの司令塔が「次期システムプロジェクト統括会議」だ。みずほFGの坂井辰史社長をトップに、みずほ銀行の藤原弘治頭取やみずほ信託銀行の飯盛徹夫社長らが参加し、月1回開く。新システム「MINORI」に関する事実上の最高意思決定機関であり、経営会議の直前に開催するのが通例だった。

 その事務局としてプロジェクト全体を束ねたのが「次期システムプロジェクト統括PT(プロジェクトチーム)」だ。統括PTの傘下に各ユーザー部門に対応する企画部会や財務・主計部会など17の作業部会を置き、それとは別に部門を横ぐしにした3つのタスクフォース(TF)を置いた。プロジェクトの実務は関係する作業部会とTFが一体になって進めた。例えばMINORIへの移行に向けた営業店のリハーサルは、営業部店業務対応TFと事務部会などが連携して進捗を管理した。

図 プロジェクト管理体制
各タスクフォースと作業部会が連携しながら課題に対処した(注:みずほフィナンシャルグループの資料を基に日経コンピュータ作成。FGはみずほフィナンシャルグループ、BKはみずほ銀行、TBはみずほ信託銀行を指す)
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 統括PTは詳細設計を始めた2014年10月に新設した。PT長を務めたのは企画畑が長いみずほFGの高橋直人常務執行役員だ。「それまではシステム部門を中心にプロジェクトを進めてきたが、開発が本格化し、事務部門の協力も欠かせないなかで、企画部門として全体を統括する部署が必要だった」(高橋常務執行役員)。

 ピーク時は20人近くが専任で所属し、作業部会との兼務者も30人ほどいた。TFとも連携しながら、統括PTにあらゆる情報が集まる体制を整えた。

 高橋常務執行役員らは全体の進捗を管理すると共に、IT部門とユーザー部門の利害調整なども手掛けた。例えばユーザー受け入れテストの段階でユーザー部門から改善要望が出た際は「コストや期間はどのくらいか」「やらなかった時のインパクトはどの程度か」といった視点で1件ずつ可否を判断した。

みずほIRの横断組織が「軍配」

 システム開発の実務で重要な役割を果たしたのが、みずほ情報総研(IR)に置いた「銀行システム横断開発推進PT(横断PT)」だ。ピーク時は専任だけで60人弱、兼務者も入れれば100人ほどが所属する大所帯だった。

 横断PTの役割は「みずほIR社内の各事業部に横ぐしを刺して統制をかける」(同社の向井康真社長)こと。みずほIRは主に業務アプリケーションごとに事業部を置いていた。各事業部は数百人の規模で、ともすれば縦割り意識が強くなり、各部間の連携が取れなくなる恐れがあった。

 みずほIRの池谷俊通常務は「事業部ごとに独自のやり方があっても構わないが、SOA(サービス指向アーキテクチャー)という大原則に沿わない考え方は取り除きたかった」と振り返る。

 横断PTのメンバーは設計書をレビューしながら、「サービスの粒度にばらつきはないか」「複数のデータベースで同じ項目を保持していないか」などを調べていった。例えばインターネットバンキングと営業店端末から入る入金取引は電文の形式が多少異なるが、同じサービスとして扱えるよう仕様を共通化した。事業部同士が対立した際は「横断PTが軍配を持った」(みずほIRの田辺主税銀行システムグループ横断本部本部長)。

 テストフェーズに入ると、横断PTの傘下に「テスト部会」と呼ばれる組織を作り、テスト計画を作成した。田辺本部長は「こういうスケジュールでテストをやっていこうという土台がないとうまく進みにくい」と話す。具体的には3カ月や半年といった長期の消化計画と、2週間ごとの短期の消化計画を用意した。

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