人工知能(AI)を中小企業が使いこなすには何が必要なのか。ここで教育の重要性を説くのが、AI/IoT評論家であり、中小企業や地方自治体への指導やコンサルティング経験が豊富なメディアスケッチ代表取締役兼サイバー大学専任講師の伊本貴士氏だ。中でも大切なのは、子供のときから創造力を養うこと。そのために、ゲームを使って楽しく学ぶ方法を提唱する。同氏にAI活用の条件を聞いた。

 AI(人工知能)活用は人づくりから──。AIをビジネスはもちろん、社会や生活のあらゆる分野で活用したいのであれば、まずは人材を育成しなければならない。これがかねて私の持論だ。

 正直に言うと、企業の経営者を前にこの話をすると嫌がられることが少なくない。多くの経営者は数年先の成果を望むからだ。業績向上へのプレッシャーがあったり在任期間が限られていたりして仕方がない面もあるが、短期的な視点のままでは、本格的かつ持続的なAI活用は難しいだろう。現在、AIやIoT(Internet of Things)、ロボティクス、第5世代移動通信システム(5G)といった新技術が目白押しだが、どれも使いこなすには個々の技術について知識を身に付けた人材が絶対に必要だからだ。

伊本貴士氏
AI活用のためには教育への投資が不可欠と熱弁を振るう。(写真:日経 xTECH)
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 AI活用を実現するには専門知識を備えたITエンジニアがいなければならないのは当然だが、それだけではない。他分野の技術者はもちろん、文系出身の一般のビジネスパーソンにもAIの基礎知識は必要だ。AIは今後、ビジネスの基盤ツールと言えるほど普及するだろう。そのときに、AIの基本知識がなければ、ITエンジニアが何を言っているのか理解できず、AIを活用したシステムや機械の交渉も発注も満足にできなくなる恐れがあるからだ。

 この点では、福井県は地方自治体の中でも特に期待できる。なぜなら、長期的な視点でAI活用を検討し始めたからだ。具体的には、およそ20年先である2040年までの長期ビジョンの策定に着手した。ビジネスや生活、社会を大きく変革させる本格的かつ持続的なAI活用には、20年先を見据えて今から人材育成を始める必要がある。

 既に、政府は1学年当たり約60万人いる大学生や高等専門学校生を対象に初級レベルのAI教育を課すと発表している。だが、これからの子供は皆、もっと幼いときからAIを勉強する必要があるだろう。実際、文部科学省は2020年から小学校におけるプログラミング教育を必修化する計画だ。

 だが、この文科省の決定について、私は懸念していることがある。「論理的思考能力を養うためにプログラミング教育を行う」と文科省が言っていることだ。論理的思考能力は主に国語で身に付けるものである。国語をはじめ、算数、理科、社会はやはり初等教育の基本だ。さらに言えば、ITエンジニアにとって論理的思考力と問題解決能力を備えているのは前提条件だ。これからはさらに「創造力」を身に付けることが大切となる。これは、成功と失敗を経験することで養われるものだ。こうした教育なくして新しい製品やサービス、企業は生まれず、経済や文化を活性化させる人材は生まれないだろう。

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