人工知能(AI)ブームは過熱しているが、AI活用は資金力のある大企業に偏っているというのが現実だ。だが、日本企業の99%超は中小企業である。ほとんどが「人手不足」に苦しんでおり、その解決策としてAIに大きな期待を寄せている。中小企業のこうした切実な声に応えられるか。AIの真価が問われている。

 「日本はAIの後進国」。ソフトバンクグループ会長兼社長の孫正義氏が2019年7月に講演で発したこの言葉が、日本のAI開発や活用の現状を端的に表している。例えば、2018年時点で日本から発表されたAI関連論文(英文)の本数は世界のわずか2%*1。ほぼ半数ずつを米国と中国の2強で争う構図の中で、日本の存在感は小さい。だが、「AI革命は始まったばかり」(孫氏)。AI活用の本格化はこれからだ。AI後進国からAI先進国へと駆け上がるチャンスはまだ残っている。

*1 学術出版世界大手のオランダ・エルゼビアの世界最大級の抄録・引用文献データベース「Scopus(スコーパス)」による調査。

 確かに、AI活用の事例は増えている。だが、まだまだ大手企業が中心という状況だ。日本企業の99%以上を占めるのは中小企業である*2。大手企業だけではなく中小企業にまでAI活用が浸透しなければ、今後世界で起こるであろう「AI革命」から日本は取り残され、競争力を失う恐れがある。中小企業のAI活用を促進するには何が必要か。それを知るには中小企業の声を聞くのが一番だ。

*2 「平成26年経済センサス‐基礎調査結果」(総務省統計局)。

2割の人口減少、省人化できなければAIの価値なし

 「とにかく人手不足が深刻だ。AIでこの悩みを解消してほしいと望む声が大きい」。ふくい産業支援センターふるさと産業育成部ベンチャー・Eビジネス支援グループグループリーダーの大木哲郎氏は、福井県の中小企業の声をこう代弁する。地方にある中小企業が抱える人手不足の問題は、想像以上に深刻だ。

2040年の福井県の環境変化を示した「福井県長期ビジョン検討ワークシート」
(出所:福井県)
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 福井県は2040年を見据えた長期ビジョンの策定に着手した。その資料となる「福井県長期ビジョン検討ワークシート」の中に、2040年の同県の「未来地図」が載っている。目を引くのは「人口減少」だ。2000年に82.9万人いた人口が、2040年には64.7万人にまで減る。22%の人口が消えてしまうのである。一方で、高齢化は加速する。65歳以上の人口は2000年の17.0万人から2040年には24.1万人にまで増え、2040年には実に37%を高齢者が占めることになる。

深刻な人口減少
2000年からの40年で福井県の人口が22%も減る。一方で、高齢者は増加し、人手不足の問題は加速する。(出所:福井県)
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 日本では今、至る所で人手不足の声が上がっているが、それが一時的なものでないことは、この未来地図を見れば一目瞭然だ。労働力となる人口がここまで減ることは、企業にとって死活問題である。しかも、これは福井県特有の現象ではない。日本の未来の姿そのものだ。中小企業が渇望する省人化や自動化、そして無人化に貢献できなければ、日本においてAIの存在価値はないと言っても過言ではないだろう。

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