シリーズパラレル方式のハイブリッド「i-MMD」を中心に開発を進めるホンダは、電動化を前提としたエンジン開発に注力する。パワートレーン開発を統括する本田技術研究所常務執行役員の松尾歩氏は、燃費と出力の両立を目指し、熱効率50%にこだわらない。プレチャンバー(副燃焼室)をエンジン開発の中核技術に据える。

欧州で「LCA(Life Cycle Assessment)」に注目する動きがある。

 今後、環境負荷ゼロを目指して、当然LCAの考え方を入れていく。技術と生産、物流を含めて、二酸化炭素(CO2)の排出量を削減する方針だ。

 LCAを考えた場合でも、電気自動車(EV)やハイブリッド車(HEV)などの電動化技術で対応できると考える。課題は、内燃機関(エンジン)についてどう対応するのか、検討を進めている段階だ。

松尾歩氏(本田技術研究所 常務執行役員 オートモービルセンター パワーユニット開発統括)
まつお・あゆむ 1965年生まれ。1991年本田技術研究所入社。パワートレーンの開発部署でV型6気筒エンジンの開発などに携わる。2011年Honda R&D Americas, Inc.に駐在。2013年エンジン開発室室長を経て、2014年パワートレイン戦略担当執行役員に就任。2019年から現職。
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 例えば、製造や物流に関連しては、1年くらい前から自社製品を対象にLCAでどう評価できるか検証し始めた。

 技術関連で今後新たに取り組まなくてはならないと思っているのは、燃料に関する領域だ。研究に着手した。

燃料の研究では、「e燃料(e-Fuel)」といった合成燃料の開発を進めるということか。

 合成燃料のようなものがエンジンを(CO2の排出と吸収を同じにする)カーボンニュートラルに導いてくれる技術だと考えている。

 ただ、CO2と水素(H2)を原料に、再生可能エネルギーを使って生成するe-Fuelのような燃料は製造などで課題がありそうだ。

ホンダの場合、ハイブリッドシステムの「i-MMD」に注力しているが、エンジンの開発は今後どう変わるのか。

 技術者視点で言うと、あまり変わらない。

 今まで我々が燃費の向上を狙い導入していた無段変速機(CVT)は、エンジンの効率のいいところを使うことを目指したものだ。ハイブリッド車(HEV)向けのエンジン開発でも考え方は変わらない。エンジンの効率のいい部分を使うという考え方で、技術開発で目指すところは同じだ。

 極端な話、トルクと回転速度を一定にするといった定点運転であれば、運転領域を狭めて熱効率を50%まで高めるというやり方もあるだろう。ただその場合、車両の質量によってエンジンに対する負荷が変わるので、定点で運転するために狭めた運転領域を、車種ごとに変更しなければならなくなる。

 我々は1つのエンジンを複数の車種に利用することを考えているので、そのような運転領域を狭めた状態で最高熱効率を高めるということはしない。効率の高い運転領域の幅が広いエンジンを開発する方針だ。

エンジン単体では、2030年に強化される欧州の燃費規制への対応は難しい。

 ホンダの場合、エンジンはハイブリッド技術を前提として開発している。

 CO2排出量を2021年比で37.5%削減するという目標は厳しく、エンジン単独では生き残れない。エンジン単独で規制に対応するためには、車両の質量を軽くすることなど他の対策も必要となる。かかるコストを考えると、費用対効果に見合わない。

 エンジン単独にした場合、運転領域を狭くして効率を高めるのは難しい。車の走行状況に合わせて様々な燃焼状態を考慮せざるを得なくなる。排ガスの後処理が必要になるなどコストが上がることも考えられる。

 車の方向性にもよるので議論はあるだろう。コストをかけてまで技術をどんどん投入して、エンジン単独の製品を2030年まで生き残らせるのが本当にいいのか、判断は難しい。

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