エンジンの位置付けを発電専用として高める日産自動車は、一定の回転・トルクで運転することで最高熱効率50%を目指す。鍵を握るのが、同社が開発した可変圧縮比(VCR)エンジンだ。VCRのリンク機構を活用したロングストロークとして、熱効率の大幅向上を狙う。パワートレーン開発を率いる常務執行役員の平井俊弘氏に、同社が目指すエンジンの姿について尋ねた。

2030年に強化される欧州の燃費規制について、二酸化炭素(CO2)排出量を2021年比で37.5%削減するという目標が決まった。これまでの戦略を変更する予定はあるのか。

 燃費規制については、ほぼ想定内だ。今進めている戦略で十分対応できると見ている。世界規模で電気自動車(EV)とシリーズハイブリッド車(HEV)の「e-POWER」を合わせた「電動車」の販売を進めていく方針は変わらない。電動車の販売目標は2025年までに、日本と欧州で50%、米国では20~30%、中国では35~40%だ。EVとe-POWERの比率は時期によって少しずつ変わる。

平井俊弘(日産自動車 常務執行役員 パワートレイン技術開発本部)
ひらい・としひろ 1960年生まれ。東京都調布市出身。1984年に早稲田大学理工学部を卒業後、同年に日産自動車入社。パワートレイン開発部でRenault社と共同開発したMRエンジンやアルティマのQRエンジンの開発などに携わる。2009年にパワートレイン開発本部パワートレインプログラムダイレクター、2014年から現職。(写真:宮原一郎)
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エンジンを発電専用とする方針も変わらないのか。

 エンジンは役割が変わる。e-POWERでは、エンジンは一定の回転・トルクで運転(定点運転)する発電専用になる。電動車戦略の中では、e-POWERが占める割合はそれなりにあるので、エンジン、あるいはe-POWERそのものも進化していく。

 例えば、排出ガスの場合、米国の規制レベルの「SULEV30」より、もっと下げた「SULEV5」と呼べる水準を目指している。

エンジンを一定の回転・トルクで運転するとなると、様々な車格(出力)に対応するために、複数の種類のエンジンが必要になる。

 3種類程度あれば十分だ。日本で販売するe-POWERは、「ノート」と「セレナ」の2車種だ。ノートの車重は1.2トン程度なのに対し、セレナは約1.7トン。ところが、両車とも搭載しているエンジンは同じで、排気量1.2Lの小さなものだ(図1)。

 車両に搭載する電池がバッファーとしての役割を担っていることが鍵となる。1.2Lのエンジンの最高出力は60kWくらい。だが、モーターの出力は、ノートが最高80kWに対してセレナは100kWだ。小さなエンジンで時間をかけて発電しても、電池を経由して一気に放電できるようにした。

図1 ノートもセレナもe-POWERは同じエンジン
ノートとセレナのe-POWERは車格が異なり車両重量も違う。だが、発電専用のエンジンは同じものを使用。車格に合わせてエンジンの出力などを変えている。取材を基に日経Automotiveが作成。
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1.2Lのエンジンで、どのような車種まで対応できるのか。

 使う状況や目的などで変わる。例えば、米国の場合、山道を大型車両で高速で走る場合がある。また、ボートをけん引して走るような使い方もある。電動車はエンジン車と比べると、けん引力が弱いという制約がある。

 これらの課題を克服しようと考えると、エンジンの発電能力は大きくならざるを得ない。ノートやセレナが搭載する1.2Lのエンジンではなく、別のエンジンを用意することになるだろう。

 また、「この車種には本当に電動車が必要なのか」といった議論も必要だ。例えば、米国で販売している排気量が5Lを超えるエンジンを搭載したピックアップトラック「タイタン」などは、電動車が必要か否かを議論する対象になり得る。

 ただ、米国での目標は2025年に電動車比率が30%なので、優先度としては低いだろう。

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