2030年にかけて、ガソリンエンジンが急速に進化する。トヨタ自動車や日産自動車、ホンダの日系大手3社が、ハイブリッド車用で熱効率を大幅に高める技術革新に挑み始めた。さらに3社は、「ポスト2030年」を見据えた取り組みも強化する。ライフサイクルでCO2排出量を評価する「LCA(Life Cycle Assessment)」の議論が欧州で始まったからだ。エンジンの重要性が一層高まる。3社のパワートレーン開発トップへの取材を基に、エンジンの将来を5回に分けて見通す。

 トヨタ自動車と日産自動車、ホンダの日系大手3社は、2030年以降を見据えてガソリンエンジンの開発に力を注ぐ。2030年時点で、エンジン車と簡易式を含むハイブリッド車(HEV)が世界の主流であるからだ(図1)。世界生産のうち約9割がエンジン搭載車になる。

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図1 2030年でも9割近くはエンジン搭載車
2020年以降にEVは急増するものの、2030年の主役はHEVを中心としたエンジン搭載車で、約9割を占める。(出所:IHSマークイット)

 加えて大きいのが、2030年にかけて二酸化炭素(CO2)排出量の測定方法が自動車のライフサイクルで評価するLCAに変わる可能性があることだ。HEVのCO2排出量は電気自動車(EV)と同等か、技術の進展次第ではEVを下回るかもしれない。2030年以降、HEVとEVが“真”の環境対応車(エコカー)の地位を巡り、互角の技術競争を繰り広げることになる。

 2019年3月、欧州議会と欧州委員会は、自動車の生産やエネルギー生成、走行、廃棄、再利用などのCO2排出量の総和を評価するLCAについて検討することを当局に要請した。2023年までに結論を出す予定である。2025年以降になるだろう「ポストユーロ7」と呼べる環境規制から、LCAでCO2排出量を評価する可能性がある。

 走行中だけのCO2排出量を対象にする現行規制から「大転換」(日系自動車メーカー幹部)と言えて、2030年以降のパワートレーン開発に大きく影響する。特に、現行規制ではCO2排出量をゼロとみなせて圧倒的に優位なEVの位置付けが下がる。EVは、発電時や電池生産時などのCO2排出量が多い。国や地域によるが、現時点でEVのCO2排出量はHEVを上回る場合が多い。

 欧州自動車メーカーは、LCAによる規制強化に備え始めた。例えばEVに注力するドイツ・フォルクスワーゲン(Volkswagen)は2019年5月、パワートレーン国際会議「第40回ウィーン・モーター・シンポジウム(40th International Vienna Motor Symposium)」で、発電時や電池生産時に対策し、LCAでEVのCO2排出量を大幅に下げる構想を発表した注1)

注1)VWは、電池工場の電力に再生可能エネルギーを使う取り組みや、電池のリサイクルに力を注ぐ考えを示した。リサイクル電池を利用したEVは、電池生産時のCO2排出量を抑えられる。

 「計算方法によるが、最悪のシナリオでEVのCO2排出量はディーゼルエンジン車を上回りかねない。VWとしては2050年までに全車両で(CO2の排出と吸収を同じにする)カーボンニュートラルに近づけることを目指す」(VW生産担当役員のアンドレアス・トストマン(Andreas Tostmann)氏)。

 HEVの役割が高まると見る日系大手3社は、EVの開発と並行して、HEVのCO2排出量を減らす開発に挑む。とりわけ重視するのが、中核技術であるガソリン機の最高熱効率を50%近くまで高めて、有害な排出ガスをほとんどゼロの水準に下げることである(図2)。ここまですれば、2030年以降の“真”のエコカーとしてHEVが活躍できると考える。

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図2 ガソリンエンジンの最高熱効率は一気に高まる
トヨタが主導するHEV用ガソリン機における最高熱効率の向上競争。ホンダがくらいつき、2020年以降には発電専用ガソリン機で日産が猛追する。トヨタ、日産、ホンダへの取材を基に編集部が推測した。(写真:トヨタ、日産、ホンダ)

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