AI(人工知能)によって変革を起こしそうな分野として期待が高まる医療業界。まだ一般の医療現場ではAIの効果が見えてこないが、着々と各種実証は進んでいる。厚生労働省が実施した「保健医療分野におけるAI活用推進懇談会」の座長を務めた国立がん研究センターの間野博行氏に、医療分野におけるAI活用の現実と今後の可能性を尋ねた。(聞き手は、森側 真一=日経BP総研 イノベーションICTラボ 上席研究員 兼 ビジネスAIセンター長)

国立がん研究センター 間野 博行 氏
1984年東京大学医学部卒。東京大学医学部第三内科助手、自治医科大学ゲノム機能研究部教授等を経て、2013年より東京大学大学院医学系研究科細胞情報学分野教授、さらに2016年からは国立がん研究センター研究所長、また2018年からは同センターがんゲノム情報管理センター長を兼務。肺がん原因遺伝子EML4-ALKの発見で紫綬褒章等受賞多数。現在は日本におけるがんゲノム医療体制の構築に従事。(撮影:菊池 くらげ、以下同)
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医療分野におけるAI活用は、現状どの程度進んでいるのでしょうか。

 AIは医療分野のいろんな領域で研究が進んでいます。一般的に様々な分野でAIの活用が進んでいますが、医療分野は特に実用化が近いところと言えます。

 ディープラーニングや自然言語処理(NLP)など利用する技術も適用領域も多岐にわたっています。国立がん研究センター内では、科学技術振興機構の支援による「人工知能を用いた統合的ながん医療システムの開発」、内閣府の支援による「新薬創出を加速する人工知能の開発」といったプロジェクトを進めているところです。

 国立がん研究センターで現在最も進んでいるのは、大腸内視鏡におけるがんのAI診断です。内視鏡から得られる画像からリアルタイムにがんを検知します。臨床試験を始めており、すでに、熟練した医師よりも高い精度で検知できるほどになっています。

 画像診断はAIと相性が良い分野です。CT画像でがんを検知するAIシステムや、レントゲン画像から早期肺がんを検知するAIシステム、痰(たん)の顕微鏡写真からがん細胞を見つけるAIシステムなども開発しています。

画像診断以外ではどうですか。

 画像診断は主にディープラーニングを用いたものですが、自然言語処理を活用したAIシステムも進んでいます。2019年6月にがんゲノム医療の遺伝子パネル検査が保険適用対象になりましたが、がんゲノム医療に用いる知識データベースを作成するためにAIを活用しています。

 がんゲノム医療のための知識データベースとして、どういった遺伝子変異にどのような薬が有効かなど、様々な論文から情報を集めて百科事典のようなものを作る必要があるのですが、その情報収集の一部をAIで自動的に実行しています。

 ただ、このAIもまだ進化の途中です。現時点ではゲノム異常と薬の単純な関係を見ていますが、今後は複数のゲノム異常との因果関係を見るなど複雑な関係性を見つけるために役立てられるようにします。

 2017年に実施した「保健医療分野におけるAI活用推進懇談会」では、画像診断支援やゲノム医療、診療・治療支援のほか、取り組むべき事項として医薬品開発や介護・認知症、手術支援などが上がりました。それぞれロードマップを策定し、各分野の専門家が取り組んでいるところです。

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