「何だ、これは?」──。竹中工務店が東京・墨田に建設中の複雑な形をしたオフィスビル。このプロジェクトの「作業所長」に任命された東京本店の永井一嘉氏は、最初に建物のパース(完成予想図)を見たとき、そう思ったと明かす。

竹中工務店が東京・墨田に建設中のリバーホールディングス本社ビルのパース(完成予想図)。曲面を多用した複雑な形をしている(資料:竹中工務店)
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 永井氏が担当することになったのは、廃棄物処理や資源のリサイクルといった事業を手掛けるリバーホールディングス(東京都千代田区)の新本社ビルだ。鉄筋コンクリート造(RC造)で、地上4階建て。延べ面積は2135.42m2の事務所である。その建物は、これまで永井氏が見たことがない形をしていた。とにかく図面に直線がほとんどないのだ。曲面を多用した、丸みを帯びた斬新なデザインが特徴である。

 施工開始は2018年11月。永井氏が作業所長に決まったのはその半年前の5月だ。頭を抱えたが、このプロジェクトは設計・施工にBIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)を採用することが目玉となっている戦略案件であることを知らされた。

 「やってやろうじゃないか」。永井氏は腹をくくると早速、BIM(米オートデスクの「Revit」)を使って17年6月から設計を進めてきたチームに合流することにした。

大きな吹き抜けの中にクレーンを立てたい

 永井氏は施工現場の立場から、設計チームに注文を出す。言うべきことは言っておかないと、あとで苦労するのは現場責任者の自分だ。遠慮をしていたら、無事につくり上げられるか自信がない。

 このとき永井氏は、建物の特徴でもある大きな吹き抜けに注目。「この穴にタワークレーンを立てられるだけのスペースを確保してほしい」と要望を出した。

 建物の外部にクレーンを立てると、道路を塞ぐなど余計なコストがかかる。そこで永井氏は建物内部に、タワークレーンを1本設けたかった。そこから建物の一番遠い位置までクレーンの先端部分が届く機種が、吹き抜けにぶつかることなく抜き差しできるだけの余裕を、意匠を崩さずにつくること──。それを設計チームに求めた。

 こうした施工現場の視点を設計段階から盛り込むことで工事を楽にし、期間を少しでも短く、かつ費用を安くあげる。人目を引くデザインであっても、施工に手がかかれば、工事が難航してコストがかさむだけだ。

 こうして18年11月、施工が始まった。竣工は20年2月を計画しており、工事は現在、大詰めを迎えている。今のところ、スケジュール通りの進捗で来ているという。

 実は永井氏は他の現場も掛け持ちしており、常駐はしていない。両国にある作業所を事実上、取り仕切っているのは、課長 工事担当の砂川亮馬氏である。

作業所長の永井一嘉氏(右)と課長 工事担当の砂川亮馬氏(左)。BIMの画面を見ながら、施工手順などを検討する日々が続いている。手前は今回の建物の設計者。施工で利用するBIMの元データは、設計チームからシステムを介して引き継いでいる(写真:日経アーキテクチュア)
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