今回取り上げるのは、今や私たちの生活に欠かせなくなったWi-Fi(ワイファイ)の話だ。しかも数万人規模の利用を想定した「巨大」なWi-Fi環境である。消費者に便利なサービスを無線で届けるために必要になる、提供者側のデジタル活用(デジカツ)と考えてほしい。

 NTTグループは現在、2020年夏の東京五輪で利用される施設に、Wi-Fi環境を整える準備を進めている。中でもメインスタジアムとなる新国立競技場には「高密度Wi-Fi」という通信方式が採用される予定だ。「マイクロセル方式」とも呼ばれる。

建築中の新国立競技場北側の観客席。写真は2019年7月時点のもの。東京五輪開催時の観客席は約6万席(写真:日経 xTECH)
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 新国立競技場は2019年9月現在、建設の最終段階を迎えている。ただし、スタジアムに設置される様々な機器類は、建物がかなりでき上がってこないと準備が進められない。完成が近づくと、一気に導入作業が忙しくなる。

Wi-Fiは「つながって当然」にどう応えるか

 東京五輪をターゲットに、建設・開業ラッシュが続く東京。新国立競技場に限らず、新築の大型施設には恐らく、Wi-Fi環境があらかじめ用意される。人が集まる建物はWi-Fiサービスを提供できることを前提に設備設計をしなければならない時代になった。

 スマートフォンの普及に伴い、高速・大容量の通信が可能なWi-Fi環境を探して歩く人が急激に増えた。ノートパソコンやタブレットを使って社外で仕事をするビジネスパーソンも、Wi-Fiがあると便利だ。都市部であれば、オフィスビルや商業施設、ホテル、街中のカフェに至るまで、Wi-Fi網は既に広く張り巡らされている。

 集客を考えると、無料で使える「フリーWi-Fi」のある/なしが決め手になる。フリーWi-Fiを利用できることを確認してから、入る店や泊まる宿を決める人が大勢いるほどだ。スマホ利用者にしてみれば、フリーWi-Fiはもはや「あって当たり前の存在」である。

 Wi-Fiサービスを利用するには、スマホなど手元の端末からアクセスポイント(AP)の通信機器に接続しなければならない。ところがWi-Fiの電波が弱いとAPに接続できなかったり、通信が途切れ途切れになったりする。これではWi-Fiはないのと同じで、ストレスがたまるだけだ。

 まして数千人、数万人規模の人が群がる場所では、フリーWi-Fiが用意されていたとしても、接続できるかどうかは現地に行ってみないと分からない。端末からAPに接続要求が殺到すると、すぐにAPが「パンク」してしまうからだ。

 そこでNTTグループが新国立競技場をはじめとする五輪会場で用意する計画なのが、つながりやすい高密度Wi-Fiである。

 スマホがWi-Fiに接続できないことには、大容量の動画コンテンツなどを会場内で配信するのは難しい。東京五輪ではこれまでにない新しいデジタルサービス(会場内での動画配信など)が数多く提供されるとみられるが、Wi-Fiにつながらないことには何も始まらない。

 例えば、開会式で日本代表選手が入場してくれば、観客たちは一斉に、スマホのカメラで写真を撮り始めるだろう(撮影禁止にはならないと仮定)。そしてその場で、フェイスブックやインスタグラム、ツイッターといったSNS(交流サイト)に画像や動画を投稿する。それはもはや、我々の日常的な行動だ。

 しかし、スマホからの画像や動画の投稿は、APに大きな負荷をかける。通常だと通信速度が極端に低下したり、通信ができなくなったりすることが考えられる。これでは観客は友人らと情報を共有できず、オリンピックを思う存分楽しめない。

 APがボトルネックにならないためには、どうするか。1つの解として、私は以前からNTTグループが研究している高密度Wi-Fiに注目していた。

 残念ながら、まだ新国立競技場のAP設置現場には立ち入れない。そこで今回は、NTTのオフィスで高密度Wi-Fiのからくりを図解してもらった。

NTTグループが新国立競技場に導入を計画している「高密度Wi-Fi」の説明を受けた(写真:日経アーキテクチュア)
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