大手ゼネコンの清水建設が、全社規模で「コンピュテーショナルデザイン」に大きく舵(かじ)を切った。約1000人が所属する設計本部の社員に、コンピュテーショナルデザインを実践させる。

 コンピュテーショナルデザインとは、設計プロセスに入る前のコンセプト固めやスタディー、シミュレーションといった企画立案を、コンピューターを使って実行することを指す。クリエーションの領域に、専用ソフトによる法規制のチェックや構造解析、環境負荷などのシミュレーションを加え、実現可能で最適なプランを導く。

 清水建設はコンピュテーショナルデザインの導入を機に、システムを一本化した。それが「Shimz DDE(デジタルデザイン・エンハンスメント・プラットフォーム)」である。同社のデジタル活用(デジカツ)を象徴する存在だ。

 その全貌を探るべく、2019年8月下旬に清水建設の本社を訪れ、幹部や若手社員にじっくり話を聞いた。

 この日の取材は幸運に恵まれた。コンピュテーショナルデザインを使い出している入社3年目の若手社員に現場で話を聞けただけでなく、当日たまたま実施されていたShimz DDEの研修ルームに立ち入ることを許されたのだ。研修日と偶然重なって、本当に運が良かった。

Shimz DDEの研修が行われている現場で若手社員の取材をしたため、実習の様子まで見学できた(写真:日経アーキテクチュア)
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 研修中の社員のパソコン画面を見てみると、部屋前方の巨大なディスプレーに表示されている建物と同じ画像が映っている。どうやらビルを設計する前の様々なシミュレーション操作などを学んでいるところのようだ。

 Shimz DDEの中核を成すソフトは、3次元(3D)モデリングソフトの「ライノセラス(Rhinoceros)」(日本での販売元はアプリクラフト)と、そのプラグインソフトで、3D形状をアルゴリズム生成して検証するグラフィカルエディターの「グラスホッパー(Grasshopper)」である。

 ライノセラスとグラスホッパーの組み合わせは、今や世界中の設計者の間で一般的になっている。ところが清水建設を含めた日本の設計者は「ライノセラス+グラスホッパー」というグローバルな潮流に乗り遅れており、欧米より10年遅れているともいわれる。

 ITの領域で、日本が「ガラパゴス化」するのはよくある話だ。建築の設計も例外ではなかったことに、私はちょっとショックを受けた。

 清水建設はライノセラスとグラスホッパーを全く利用していなかったわけではない。海外案件や留学経験がある社員の中には、ライノセラスとグラスホッパーを積極的に使っている人もいた。

 しかし全ての設計者に浸透しているわけではなく、全社標準の仕組みにはなっていなかった。これでは世界市場で戦っていけない。

 そこで誕生したのがShimz DDEと考えることもできる。Shimz DDEは、設計分野でデファクトスタンダード(事実上の標準)になりつつあるライノセラスとグラスホッパーをベースに開発している。ただし、清水建設はこれまで使ってきた他のツールも適材適所で併用することにした。そこでライノセラスの環境に別のソフトを移植したり、接続したりして、Shimz DDEを構築している。

コンピュテーショナルデザインでは、プラン変更による事業性の比較が何通りでも簡単に実行できる(資料:清水建設)
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