20年以上にわたって、企業のビジネスモデル研究やIT活用といった事例記事を書いてきた私(川又英紀)が、2019年4月から建築専門誌『日経アーキテクチュア』を担当することになった。私自身にとっては、過去最大級の「異動」である。

 しかし、会社的には異動ではない。その証拠に辞令は出ていない。世界一の技術系サイトを目指す『日経 xTECH』を運営する日経 xTECH編集部に所属している私の場合、組織内の役割が変わったにすぎない。肩書も日経 xTECH編集部副編集長のままだ。

 考えてみれば、建築の話題を全く取材・執筆したことがない私が19年春にこの業界を担当することになったのは、偶然ではないだろう。建設業界もデジタル活用(デジカツ)と無縁ではいられなくなったからだ。

 人工知能(AI)やIoT(モノのインターネット)、VR/AR(仮想現実/拡張現実)といった話題のテクノロジーは、建設業界のビジネスにも直結する技術だ。大型施設の開発やスマートシティーにITは不可欠だし、住宅にもAIやIoTが入り込んでくる時代が既に到来している。ライバルは建設業界以外から、突然出現してきてもおかしくない。そうした危機感を建設業界の人たちは認識できているのだろうか。

 他業界に比べ、相対的に「デジカツが遅れている」と言われて久しい建設業界に、私のような建築に対する先入観が少なく、かつIT畑で育った記者が乗り込んだら、その現場はどう映るのか。

 このコラムは「建築の外」に長く身を置いてきた私なりの視点で、建築の設計・施工・維持管理におけるデジカツの最前線に切り込むことを目的とした、体当たり企画だ。新人記者になったつもりで、デジカツ現場の熱気や焦り、秘められた可能性や課題などをリアルにお伝えしていきたい。

 副編集長は一般にデスクと呼ばれることが多い。そこでコラムのタイトルには「川又Dが行く!」と入れることにした。Dにはデジタルの意味も込めた。

(イラスト:宮沢 洋)
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 前置きはこれくらいにして、本題に入りたい。新連載の記念すべき第1回に選んだ話は、建設ラッシュが続く東京を中心に国内外で幾つもの大型案件を抱えている大手ゼネコンの1社、清水建設のデジカツである。

 同社は今まさに、建築の業務プロセスの大改革を断行している真っ最中だ。何十年もの間、大きく変わることがなかった設計・施工のフローを全社レベルでデジタルに置き換えようとしている。

 彼らの本気度は、開発した新システムとその導入規模にはっきりと表れている。1000人規模が所属する設計本部の担当者全員に「コンピュテーショナルデザイン」を実施させる計画だ。

 コンピュテーショナルデザインとは、設計に入る前のコンセプト固めやスタディー、シミュレーション、模型づくりなどを、コンピューターを駆使して実行することを指す。より良いデザインを見つけるための設計の前処理といえる。その先に図面作成のような設計プロセスがある。

 ただし、コンピュテーショナルデザインではその工程のなかで、図面もパース(完成予想図)もほぼでき上がっていると言っていい。だから設計が格段に速くなるメリットがある。

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