米国の主要IT企業4社の頭文字をとった「GAFA」は、一般にも広く知られるようになった。では、「ZORC」(ゾーク)はご存じだろうか――。米国の不動産テックを代表する4社の頭文字を並べた言葉だ。その4社とは、Zillow(ジロー)、Opendoor(オープンドア)、Redfin(レッドフィン)、Compass(コンパス)だ。この4社の特徴を、米国の不動産テック企業・Movoto(モボト)で副社長を務める市川紘氏が2019年9月に来日した際、不動産テック協会主催のセミナーで講演した。この記事は、その講演内容に氏が補足的な説明を加えたものだ。「ZORC」4社がどのような事業領域で躍進し、既存の企業とどう違っていたかなどを解説する。

米国不動産テックの巨人「ZORC」(ゾーク)とは、Zillow(ジロー)、Opendoor(オープンドア)、Redfin(レッドフィン)、Compass(コンパス)の頭文字を並べた言葉だ。「GAFA」の不動産テック版である(資料:市川紘)
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 米国の不動産テックを代表する「ZORC」。この4社を、米国の不動産業界を説明する際によく使われる分類を用いて解説する。縦軸は「Buyer(買い手)」と「Seller(売り手)」だ。日本でもなじみのある分類だろう。横軸はちょっとユニークで「Search(サーチ)」と「Transaction(トランザクション)」というプロセスで分類する。「サーチ」が「検索・検討」、「トランザクション」が「内見、申し込み、交渉、契約」といった取引を表す。この分類を用いて、4社の事業内容などを解説する。

 まず「不動産テック登場以前」を説明したい。2000年ごろまでは、すべての領域を仲介会社が担っており、仲介会社に行かないと何も始まらない状況だった。仲介会社に行って物件を紹介してもらって、内見、申し込み、交渉、契約と、仲介会社のエージェントとやりとりする流れだ。エージェントとは不動産仲介に携わる営業担当者のことで、中古物件の取引が活発な米国では重要な役割を果たしている。

不動産テック登場以前は、大手仲介会社がすべての領域をカバーしていた。代表的企業は、Realogy Holdings(リアロジー・ホールディングス)、Keller Williams Realty(ケラー・ウイリアムス・リアルティ)、RE/MAX(リマックス)などだ(資料:市川紘)
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米国の不動産テックはポータルサイトから始まった

 米国の不動産テックが始まったのは「買い手」の「サーチ」、つまり物件を買いたい人が検索する不動産ポータルサイトからである。Zillow、trulia(トゥルリア)、realtor.com(リアルター・ドット・コム)、こういった不動産ポータルが2000年代中ごろに登場した。不動産ポータルサイトは日本でもよく知られていて、SUUMO(リクルート住まいカンパニー)、ライフルホームズ(LIFULL)、アットホーム(アットホーム)が代表的なサイトだ。

米国の不動産テックは「買い手」の「サーチ」から始まった。いわゆる不動産ポータルサイトだ。Zillow(ジロー)、trulia(トゥルリア)、realtor.com(リアルター・ドット・コム)などが代表的な不動産ポータルサイトである(資料:市川紘)
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 米国の不動産ポータルサイトで注目したいのがZillowだ。米国・不動産ポータルの覇者であり、米国の不動産テック全体でも代表格である。設立は2006年で、本社はシアトル。18年の年間売り上げは約1440億円(Zillowグループの総収入13億3300万ドル、1ドル=108円換算)。同社は11年にナスダック(NASDAQ)に上場しており、19年9月時点の時価総額は約6635億円(61億4400万ドル)に及ぶ。

 主な事業は、売買と賃貸に関する物件情報のポータルサイトだ。課金モデルは、不動産エージェントや仲介会社からの広告収入である。米国には仲介会社向けにMLS(Multiple Listing Service)という事業者間の不動産流通物件に関するデータベースがあるが、Zillowは仲介会社ではないのでアクセスができない。第三者を介してMLSのデータを購入するなどして、掲載物件を確保している。

 ユーザーが約2億人という圧倒的な数を誇る。また、物件価格査定ツールZestimate(ゼスティメート、Zillow+Estimate)を開発しており、このアルゴリズムによる物件評価額をウェブで公開して一躍有名になった。また、15年には業界2位のtruliaを買収するなど、全米各地の主要ポータルサイトを買収して、その地位を確固たるものにしている。

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