進化するオンライン診療、サブスクなど新サービスが続々登場

2019/08/26 05:00
河合 基伸=日経 xTECH/日経デジタルヘルス

 ソフトバンクやLINEに続き、ケーブルテレビ事業者のジュピターテレコムが参入を表明し、にわかに注目を集めるオンライン診療(関連記事)。一方で、以前からオンライン診療システムを手掛けてきた企業は、周辺のサービスを拡充する動きを見せている。オンライン診療が新たな進化を遂げようとしている。

(出所:PIXTA)
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 2018年4月に施行された診療報酬改定で、オンライン診療に対する診療報酬が新設された。患者の通院の負担軽減や、医師の偏在化の解消、働き方改革の推進といった期待が高まり、大きな注目を集めた。しかし実際には、オンライン診療が広く普及するには至っていない。診療報酬の算定条件が関係者の予想以上に厳しく、医療機関も患者も十分に活用できていないからだ。

 オンライン診療料が算定される対象疾患は、糖尿病などの生活習慣病やてんかん、難病などに限られ、要望が多かったアトピー性皮膚炎やうつ病などは対象にならなかった。しかも対象の疾患であっても、事前に6カ月に渡って対面診療をした後にオンライン診療を始めないと適用されない。緊急時におおむね30分以内に対面診療できる患者という条件もある。

2018年4月にオンライン診療に対する診療報酬が新設された
(出所:日経 xTECH)
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 こうした制限が徐々に緩和されれば、普及への道筋が見えてくる。診療報酬の改定は2年ごとのため、次の2020年4月の改定が最初のチャンスになる。しかしオンライン診療関係者は異口同音に「今回は大きな進展はなさそうだ」と話す。オンライン診療の不適切な利用が表面化した例(医薬品をオンライン診療のみで処方する)もあり、慎重な意見もある。広く普及するには、もう少し時間がかかりそうだ。

 診療報酬改定などについて審議する厚生労働省の諮問機関「中央社会保険医療協議会」の資料「医療におけるICTの利活用について」を見た関係者は、「進展があるとすれば在宅医療でのオンライン診料の活用に関してではないか」とする。

医療データの活用へ

 診療報酬の算定条件が予想以上に厳しくオンライン診療が広く普及するには至っていないことから、オンライン診療システムを手掛ける企業は「オンライン診療事業は赤字。どこも厳しいだろう」とする。こうした状況が逆に、新規のビジネス構築に向けてオンライン診療に進化を促し始めた。オンライン診療システムを手掛ける企業は、既存の枠組みにとらわれない新たなサービスの構築に向けて動き出している。

患者の状態を把握し、最適な医療を提供する
(出所:インテグリティ・ヘルスケア)
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 「当初は診療報酬が算定されれば市場ができると考えていた。今は初心に返って、医療現場とクライアントにとって何が必要かを考えるようになった」(インテグリティ・ヘルスケア 代表取締役社長 園田愛氏)――。インテグリティ・ヘルスケアは、これまで自社のシステム「YaDoc」を「オンライン診療システム」として訴求してきたが、2019年1月から「疾患管理システム」へとリブランディングして機能を拡充した。社長の園田氏は「オンライン診療は『ICTを活用して利便性を高める』という印象が強くなっているが、それ以外の目的である『患者の日常生活の情報を得ること』や『治療の成果の最大化』にも取り組む」とした。

 疾患管理システムでは、センサーや食事記録などによるモニタリングや、疾患ごとに気になる症状を記録する問診、ビデオ通話やメッセージ機能によるコミュニケーションを組み合わせたソリューションを提供する。これにより患者の自宅での症状が把握でき、治療の成果の最大化が可能になる。患者の日常のデータを活用することで、新たな収益化の機会も見えてきた。システムの使用料は医療機関が支払う他に、匿名化された患者のデータの活用に積極的な製薬企業がスポンサーとして支払う場合が多くなっているという。

オンラインセカンドオピニオンの参加医療機関
(出所:メドレー)
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 メドレーも2019年4月に「オンライン診療システム」などを連携させて「クラウド診療支援システム」へとリニューアルした。電子カルテも連携しており、医療機関にあるデータも活用した患者中心の医療を実現する「医療データプラットフォーム」の構築を目指す。この他にメドレーは、オンラインでのセカンドオピニオンや医療相談のサポートを2019年6月に開始した。セカンドオピニオンを受ける際に、「受けられる病院がどこかわからない」「診察料や交通費の負担が大きい」などの、さまざまなハードルがある。これをオンラインで解決しようというわけだ

 MICINは、オンライン診療サービス「curon」を利用した、遺伝性のがんに関する医療相談を2019年5月に開始した。がん研有明病院の遺伝子診療部が、オンラインで全国から相談を受け付ける。現状では遺伝性のがんについて相談できる病院が限られ、家の近くに相談できる病院がない場合も多い。オンラインを活用することで、誰でも相談できるようになる。

自由診療で現状打破

 「さまざまな要件がある保険診療ではなく自由診療で提供する」(テレメディーズ代表理事で医師の谷田部淳一氏)――。現状を打破しようと、診療報酬を当てにした保険診療ではなく、自由診療でオンライン診療を実施する動きも出てきた。

 テレメディーズは、高血圧治療に特化したオンライン診療支援サービス「テレメディーズBP」の提供を2019年5月に開始した。自宅にいながらスマホやパソコンを通じて、オンラインで医師による高血圧治療を受けられ、薬も郵送で届く。服薬指導もオンラインで実施する。しかも薬代を含めて月額4600円(税別)からのサブスクリプション(定額制)モデルを採用して話題を集めた。

 保険診療に比べてユーザーの自己負担が増えることも想定されるが、通院の手間などを考慮すると「メリットを感じるユーザーがいると考えている」(谷田部氏)とした。企業の健康保険組合と提携して、自由診療の費用の一部を負担してもらうことなども検討していく。日本全国で利用でき、初年度に500~1000人のユーザーの獲得を目指す。

オンライン診療時の医師側の画面
(撮影:日経 xTECH)
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 診療報酬の算定条件が予想以上に厳しかったことで、オンライン診療の周辺サービスを拡充したり、自由診療でオンライン診療を実施したりする動きが出てきた。さらに将来性を見込んだIT企業が続々と参入している。

 電子処方箋や遠隔服薬指導についても議論が進んでおり、近い将来にはオンライン診療後に紙の処方箋が届くのを待つ必要がなくなったり、薬局に出向くことなく処方薬を自宅に配達してもらったりできるようになりそうだ。今後はこうした追い風とともに、既存の企業と新規参入企業が競ったり連携したりしながら、オンライン診療がさらなる進化を遂げる可能性がある。

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