中国で電気自動車(EV)のスタートアップが続々と登場している。50社とも60社ともいわれる新興勢が注力するのは車両開発ではない。サービスや自動運転などクルマとしての魅力を高める取り組みで、立ち位置を確保する。有望株を現地取材した特集「ポストTeslaが示す、新しいEVの売り方」の初回は、トヨタ自動車との提携を決めた中国・奇点汽車の前編。

 模倣か――。最初に見たときはこう思ったが、取材を進めると話が大きく違うことが分かった。

 2019年4月、中国・上海。「上海モーターショー2019」の一角で、トヨタが過去に少量販売した小型EV「eQ」に酷似するクルマを見つけた。「iC3」という名前が付いた小型EVで、展示していたのは中国・奇点汽車(図1)。2014年に創業したばかりのEVスタートアップだ。

図1 見た目はほぼトヨタの小型EV「eQ」
奇点汽車が2019年4月の上海モーターショーで公開したコンセプトEV「iC3」。トヨタからEV技術の提供を受け、2021年の発売を目指す。(撮影:日経Automotive)
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 「iC3は、ボディー骨格などをトヨタから提供してもらいつつ、当社独自の機能や内外装のデザインを盛り込んだEVだ」。日経Automotiveの取材に応じた奇点汽車CEO(最高経営責任者)の沈海寅氏が説明する(図2)。

図2 奇点汽車CEOの沈海寅氏
中国・上海で取材に応じた。(撮影:日経Automotive)
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 奇点汽車とトヨタは、iC3の披露と同時に、提携を結んだことを発表した。提携のきっかけは、「トヨタ社長の豊田章男氏から、中国の若者に対してどのようなEVが適しているのか勉強したいという提案があった」(沈氏)ことだという。両社が提携に向けた議論を始めたのは2017年末。「トヨタの意思決定スピードは速く、わずか1年半で発表までこぎつけられた」(同氏)

 トヨタは奇点汽車に電動化技術を提供する。見返りとしてトヨタは、「NEV(New Energy Vehicle)規制」規制をクリアするために必要なクレジット(生産枠)の余剰分を優先的に購入できる契約を結んだ。

 NEV規制は、EVやプラグインハイブリッド車(PHEV)、燃料電池車(FCV)の生産・輸入を一定割合で義務付けるもの。エンジン車の生産台数にある係数(要求比率)をかけて求めたクレジット(生産枠)で管理する。NEVクレジットの要求比率は、2019年に10%、2020年に12%。達成できなければ、他社からクレジットを購入しなければならない。

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