中国政府は2025年に次世代通信規格の5G(第5世代移動通信システム)関連産業の市場をGDP(国内総生産)の3.2%に匹敵する1610億米ドルに拡大することをもくろむ。5GベースのIoT(Internet of Things)/AI(人工知能)/クラウド領域がハイテク産業の中でも中国が覇権の構築を狙う本命の領域だ。新しい半導体やIoT端末・モジュール市場の創出によって先進国企業にビジネス機会が広がるが、中国政府の投資計画や予測した市場の実現性、米中貿易戦争の地政学的リスクといった点で課題が存在する。

 中国政府は2015年に「中国製造2025」を発表し、技術イノベーションと顧客・市場ニーズ志向に基づく製造業の付加価値向上を進め、さらなる国際競争力の強化を目標とした。重点産業セクターとして、情報通信技術(ICT)、ロボット、高性能半導体チップ、新エネルギー車、宇宙航空機、医薬、医療機器、グリーンエネルギー、電力機器、農業機器、海洋技術、新材料を挙げている。2025年までにこれらの重点産業における部品・製品調達需要の70%以上を、政府や国内資本企業がコントロールできることを目標に掲げる。スローガンは「中国製造業のアップグレード」だ。

自動運転やスマートシティーの実証を支援

 中国製造2025以前に発表された5GやIoT、AI領域の産業政策には、IoT端末や半導体に関連した項目がある。IoT端末関連としては、2013~2015年にかけて発表された「インターネットプラス行動計画」などのIoT産業政策が含まれる()。

図 中国が描く5G関連産業の覇権構築に向けたロードマップ
(出所:筆者)
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 しかし、2016年以降に発表された政策を見ると、初期の目標に加えて、5GやIoT、AIといった次世代通信やソフトウエア、サービス分野に政策の重点がシフトしたことがうかがえる。IoT技術の導入により、経済効果として中国の製造業の売り上げ規模が15年間で1960億米ドル拡大すると予測。モバイル通信やIoTネットワークサービスなどの周辺産業の売り上げを含めると、経済拡大の効果は7360億米ドルとしている。

 この政策は、モバイルIoT通信の中で、「M-M(Machine-to-Machine)」に重点を置いたものである。中国政府の役割は中国版標準の確立とグローバル市場への展開の基盤構築であり、中国モバイル通信事業者3社(チャイナモバイル(中国移動通信集団)、チャイナユニコム(中国聯合通信)、チャイナテレコム(中国電信))が、その実行の役割を担っている。

 この3社のIR(投資家向け広報)資料を見ると、成長戦略に中国政府のIoT産業政策が反映されているのが分かる。具体的には法人顧客向けのモバイルIoT通信を成長エンジンと位置付け、自動運転や車載インフォテインメントを含む領域である「IoV(Internet of Vehicles)」、スマートシティー、エネルギー、輸送、農業、セキュリティー、ヘルスケアを重点分野としている。中国政府はIoTの中国版標準を確立するために、自動運転とスマートシティーの実証プロジェクトを支援しており、2020年までに6030億米ドルの投資を計画している。

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