米中両国による相互の関税措置によって、米中貿易戦争はエスカレートの様相を示している。特に最近の米国政府による中国ファーウェイ(華為技術)に対する半導体の供給規制などで、次世代通信規格の5G(第5世代移動通信システム)やIoT(Internet of Things)、AI(人工知能)といった領域におけるグローバルなサプライチェーンに計り知れない影響を与えるという危惧が生じている。本連載の第1回では、ハイテク産業、とりわけ5G/IoT/AI領域における米中覇権争いの構図を分析し、米国の危機感と日本企業にとって注視すべき動向や兆候を考える。

 中国政府は2015年に発表した産業政策「中国製造2025」と前後して、半導体やIoT(Internet of Things)、AI(人工知能)分野における中国の産業振興に関し、次々と政策を打ち出している。官民一体体制の下で5G(第5世代移動通信システム)やIoT、AIのグローバルハブとなる目標に向けた統合的な政策を推進し、自動運転やスマートシティーといった重要分野におけるエコシステムやビジネスモデルを早期に構築し、「先行者利益の獲得」と「中国版標準の確立」を目指している。

中国のハイテク産業の市場支配を阻止

 米国政府はハイテク産業における中国台頭への対抗措置として、外資系企業に対する中国側の知財窃盗や不公正慣行によって米国企業が多大な損害を被っていると主張し、中国に構造的な問題の改善を要求している。

 背景にあるのは中国ハイテク産業の台頭、とりわけ、5G/IoT/AI領域での中国の覇権構築や市場支配に対する脅威である。5G/IoT/AI市場は米国のハイテク覇権における中核であり、その弱体化につながる危機感が米国内で強い。米国の通商措置からは、経済的損失だけでなく安全保障の観点からもハイテク産業における中国の台頭を阻止したいとの意図がうかがえる。

 ただし、米国政府の主張については、中国政府は産業政策の根幹に関わることとし、通商協議の場では合意に至っていないのが現状である()。

図 5G/IoT/AI分野における米中覇権争いの構図
(出所:筆者)
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