電解質として可燃性の有機電解液を使う既存のリチウムイオン電池(LIB)。その電解質をゲル状もしくは固体のポリマー電解質に変えることで電池セルの安全性を高め、電池パックとしてのエネルギー密度の向上や低コスト化につなげようというのが、米陸軍研究所(US Army Research Laboratory、ARL)や、米A123システムズ(A123 Systems)と米イオニック・マテリアルズ(Ionic Materials、IM)のグループだ。ARLはゲルのポリマー電解質(Gel Polymer Electrolyte、GPE)を、A123 SystemsとIMのグループは固体のポリマー電解質を用いることで、電池セルの安全性を高める。

不燃性かつ無毒で損傷に耐えられる

 ARLが狙うのは、電池セルを完全に密閉する必要性をなくし、電池パックにするときに電池の性能を犠牲にせずに多様なパッケージングに対応できるようにすること。ARLで電気化学の材料科学者(Materials Scientist, Electrochemistry)を務めるArthur Cresce氏が、先進車載電池の国際会議「19th Annual Advanced Automotive Battery Conference(AABC 2019)」(2019年6月24~27日に米国サン・ディエゴで開催)で明かした。本連載の第1回で紹介したように、同氏によれば、「電池パックの質量のうち、パッケージングの素材が最大で17%を占める」(図1)。そのパッケージングを簡素化して軽くできれば、電池パックのエネルギー密度の向上につながる。

図1 マンガン酸リチウム(LMO)を正極に使ったLIBの電池パックにおける質量の内訳
AABC 2019におけるARLのArthur Cresce氏の講演を基に日経 xTECHが作成した。
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 そのためにARLが取り組んでいるのが、リチウム(Li)塩の中に水を持つ電解質(Water-in-Bi-Salt、WiBS)をゲル化してLIBの電解質として適用すること。Li塩の中に水を持つ電解質を使うことで、LIBを不燃性かつ無毒で損傷に耐えられるようにする。ゲルのポリマー電解質は、モノマーの混合物である液体のWiBSに紫外線(UV)を照射し、ポリマー化と架橋*1の形成を促すことで作製する(図2)。

*1 鎖状のポリマー分子の間に橋をかけるように結合を形成すること。
図2 ARLが想定しているゲルのポリマー電解質(GPE)を使ったセルの生産プロセス
AABC 2019におけるARLのArthur Cresce氏の講演を基に日経 xTECHが作成した。
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 同氏によると、ARLが試作したセルのエネルギー密度は、200Wh/kgと見積もられる。同セルは、正極にリン酸バナジウムリチウム(LiVPO4)、負極にグラファイト、電解質にGPEを使う。電解質にGPEを使用したことに加えて、負極の表面をハイドロフルオロエーテル(Hydrofluoroether、HFE)と架橋したポリエチレンオキサイド(Polyethylene oxide、PEO)でコーティングしたことがもう1つの特徴である。これにより負極の表面を安定化させ、4Vで50サイクルの充放電を可能にした。

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