AI導入で最も手間がかかるモデル開発を不要にするのが学習済みAIだ。学習済みAIにAPI経由で接続すれば、すぐに利用可能だ。複数のサービスを実際に利用して精度を比較するなど簡単な作業で導入できる。

 「短期間で導入したいが、当社にはAIのノウハウがないし、専門家もいない。検討当初からクラウドサービスの利用を念頭に置いていた」。こう話すのは中小企業の経営指導やダスキン事業を手掛ける武蔵野のシステム部でAI導入推進役を務める小島俊介氏だ。

 武蔵野は2019年3月にコールセンターでの顧客との会話音声を、自然言語処理を利用してテキスト化するシステムを導入した。音声データをクラウドが提供する学習済みAIサービスに送信し、ほぼリアルタイムにテキスト化。オペレーターはテキスト化された内容を自分のデスクトップPCからWebブラウザーで閲覧できる。

武蔵野のコールセンターシステムの概要
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 当初から学習済みAIサービスの利用を想定していた武蔵野が導入にかけた期間は5カ月程度だ。音声をテキスト化する学習済みAIサービスを2種類、コールセンターに実際に導入して精度を比較検証した。

 その結果、武蔵野は米Googleの学習済みAIを利用する丸紅情報システムズ「MSYS Omnis」を採用した。Omnisは音声のテキスト化にGoogleの「Speech to Text」を利用するなど、Google Cloud上で構築したサービスだ。

バージョンアップで精度が向上

 学習済みAIサービスを選定する際に武蔵野が最も注目したのは、音声をテキスト化する際の精度だ。「比較を始めた当初、どちらのサービスも精度は60%程度だった」と小島氏は話す。ところが検証期間中にGoogle Cloudのサービスがバージョンアップし、「精度が80%まで上がった」(小島氏)。一方のサービスは60%前後のまま、精度に変化がなかったという。

 もう1つ武蔵野が導入時に注目したのは新規に必要なシステム投資だ。Google Cloudを利用する場合、ハードウエア投資は、コールセンターシステムのPBX(構内交換機)から音声データを取り出して保管するためのサーバーのみだった。「検討したほかのサービスでは、コールセンターの座席ごとに音声変換用の装置が必要なケースもあった」(小島氏)という。検証期間中には、オペレーターも発話の速度を落とす、はっきり話すなどの取り組みにより精度の向上に協力した。

 テキスト化したデータは、武蔵野が独自に構築したFAQシステムに登録し、オペレーターが共有できるようにしている。「ベテランのオペレーターの対応を新人が閲覧できるようにすることで、コールセンター業務の底上げにもつながっている」と小島氏は話す。

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