IoT(Internet of Things)向けの通信方式として脚光を浴びるLPWA(Low Power Wide Area)。免許不要帯を使うSigfoxやLoRaが先行し、免許帯域を利用するNB-IoTがそれに続いたが、ここにきて第3勢力とも呼べる方式が注目を集めている。後編では、国際標準準拠品や映像伝送まで実現する方式などを紹介する。

 「国際標準規格の製品を採用したい」という声に対してはWi-SUNが名乗りを上げる。「政府機関や官公庁系では国際標準規格であることを重視する場合が多い」(ローム オプト・モジュール生産本部 フォトニクス製造部 モジュール開発課 技術主査の生田朋広氏)。海外では台湾やインドの電力会社がスマートメーターなどでWi-SUNを採用しようとする動きがあるという。

 Wi-SUNは国際標準規格IEEE 802.15.4gをベースに世界で200団体が加盟する「Wi-SUN Alliance」が標準化を進めている通信規格である。通信速度は約100kビット/秒とLoRaやSigfoxよりも高速で、それでいて500m~1kmほどの通信距離を可能とする。日本では電力用のスマートメーターで採用実績がある。

 このWi-SUNでマルチホップに対応するのがWi-SUN FAN(Field Area Network)である。最大ホップ数は20であり、理論的には20km先と通信できる。Wi-SUN FANの通信モジュールは2019年1月にロームが「世界で初めて」(同社)Wi-SUN Allianceの認証を取得した製品を発表している。

4000万台超の出荷実績が武器に

 Wi-SUNを搭載したスマートメーターは、日本で既に4000万台以上が使われている。「現在、都市部で920MHz帯をスペクトル解析するとWi-SUNの電波がよく見える」(Wi-SUNとは別のLPWAを推進する企業の技術者)と言うほど、普及が進んでいる。

 この普及具合いはWi-SUN FANに有利に働きそうだ。Wi-SUNの各規格は物理層が共通であり、無線通信用ICで言えばベースバンド部分を共通化できるからだ(図1)。「他の無線方式に比べれば(無線用IC)を低コストにできる」(生田氏)という。

図1 共通の物理層で通信モジュールコストを削減
Wi-SUNの各プロファイル。物理層とMAC層が共通する。そのため、通信モジュール内のベースバンド部などを共通化できる。HAN(Home Area Network)は、既にスマートメーター向けに数千万台が出荷されており、これはFAN(Field Area Network)のモジュールのコスト削減につながるという。(図:ロームの資料を基に本誌が作成)
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 加えてWi-SUN Allianceは認証に特に力を入れる。「Bluetooth Low Energy(BLE)などの他の規格と比べてもインターオペラビリティー(相互運用性)がしっかりできているといえる」(ACCESS IoT事業部 営業部 部長の林純一郎氏)。

 さらに、組み込みOSからも攻める。英Armは2019年3月に同社の「mbed OS」がWi-SUN FANに標準対応すると発表した。図9にあるインターフェース層とメディアアクセス制御層のWi-SUN FAN用の各プロトコルを同OSに標準で搭載する。Armコア実装のWi-SUN FANを活用したアプリケーションの開発期間を短縮できるとする。

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