「世界と比べると日本はいつのまにかAI(人工知能)後進国になってしまった。しかし、AI革命はまだ始まったばかり。これから取り組んでも手遅れではない」。ソフトバンクグループの孫正義会長兼社長は2019年7月、法人向けイベント「SoftBank World 2019」の講演でこう語った。

 日本でAIの普及が進まない点を憂慮しながらも、巻き返せる自信が表れた発言だ。ソフトバンググループは既に、AIをより簡単に使えるようにする技術に強い海外のスタートアップ企業にすでに投資していて、日本への展開を目指すための布石をすでに打っている。

マウス操作でAIや機械学習が使える技術を持つ米ペテューム

 投資先の1社がAIプラットフォームベンダーの米ペテューム(Petuum)だ。2016年11月、米カーネギーメロン大学の機械学習学部の教授らが設立したスタートアップ企業だ。これまでAIや機械学習を簡単に利用できるAIプラットフォーム「Symphony」を主力製品に据えてきた。

 SymphonyはGUI(グラフィック・ユーザー・インターフェース)の設定画面から、AIや機械学習関連のソフトウエアモジュールを複数、マウス操作で連携させることで、AIや機械学習を利用できるようにする。AI開発の敷居を下げるこのSymphonyで、製造分野や医療分野向けにビジネスを展開している。

 ソフトバンクグループはAIや機械学習を簡単に利用できるペテュームの技術に着目。2017年10月、経営が安定してきて収益が伸びていく段階に来たとして、同グループが中心になって、ペテュームに9300万ドル(約99億円)を投資。現在はソフトバンク・ビジョン・ファンドが主導して、総額1億800万ドル(約114億円)を出資している。

難しいチャットボット開発や柔軟性がないRPAから脱却

 ペテュームのAIツールはSymphonyだけにとどまらない。2019年7月には自然言語処理や音声・画像認識といったAIを組み込んだRPAツール「Petuum Neurobots」を発表した。チャットボットの「Kaibot」、音声チャットボット「Chimebot」、画像認識をする「Chicbot」「Pixbot」の4種類からなる。

 Kaibotはこれまで数カ月以上かかっていたチャットボットの開発を、1時間程度にまで短縮するソフトだ。ユーザーが質問と回答が対になったFAQのようなテキストデータを登録したり、チャット画面に表示させるロゴなどを登録したりすると、ツールがチャットボットを自動生成する。音声チャットボット「Chimebot」は音声認識が必要な場面でKaibotの代わりになるよう開発した。空港やレストランなど周囲の騒音環境に応じて音声を認識しやすくするカスタマイズができる。

Kaibotの開発画面
(出所:米ペテューム)
[画像のクリックで拡大表示]

 「チャットボットを使おうと思っても、従来の開発実行環境は高価で使いづらい。そこで数分から1時間で簡単にチャットボットができるKaibotを開発した。RPAのソフトロボットも決まった手順でしか業務を処理できないなど、柔軟性に欠けている。NeurobotsはAIを組み込むことで、ソフトロボに柔軟性を持たせた」。同社の創業者の1人でもあるエリック・シン最高経営責任者(CEO)はNeurobotsを発表した狙いについて以下のように語る。

米ペテュームのエリック・シン最高経営責任者(CEO)
[画像のクリックで拡大表示]

 Neurobotsの発表で際立ったのが、技術に偏り過ぎない製品アピールの仕方だ。ペテュームはNeurobotsの技術的な特徴を訴求するだけではなく、「それぞれのNeurobotsがどんなビジネスの場面で役立つのか」という活用例も欠かさずに押し出している。

この先は有料会員の登録が必要です。今なら有料会員(月額プラン)が12月末まで無料!

日経 xTECHには有料記事(有料会員向けまたは定期購読者向け)、無料記事(登録会員向け)、フリー記事(誰でも閲覧可能)があります。有料記事でも、登録会員向け配信期間は登録会員への登録が必要な場合があります。有料会員と登録会員に関するFAQはこちら