垂直記録の開発を進める東芝は、ついに、垂直記録を搭載したHDDの製品化を決めた。開発を推進した田中陽一郎氏は、恩師で垂直記録の生みの親である岩崎俊一氏に報告した。30年の時をへて、ついに日本発の垂直記録は世界に羽ばたく。

※本記事は、2006年発行の『日経エレクトロニクス』に掲載された記事を再構成・転載したものです。記事中の肩書きや情報は掲載当時のものです。

そして各社が垂直へ

 2005年6月に東芝が先陣を切った後、2006年に入って他のHDDメーカーも続々と垂直記録方式の製品を投入した。

 東芝から遅れること半年、2006年1月にはHDD世界最大手の米Seagate Technology LLCが2.5インチ型の出荷を開始した。面記録密度は132Gビット/(インチ)2で東芝と同等だ。2006年4月に同社は、3.5インチ型へ垂直記録方式の適用範囲を広げた。

 東芝の田中陽一郎の後輩、高野公史が率いる米Hitachi Global Storage Technologies, Inc.(HGST社)の開発チームも実用化にこぎ着けた。HGST社は、東芝がニュース・リリースを公開した2004年末に、垂直記録方式を使った試作機「プロト6」を得意先に配るところまできていた。しかしその面記録密度は88Gビット/(インチ)2で東芝には及ばなかった。HGST社は2006年5月17日に発表会を開く。この日から垂直記録方式を用いた2.5インチHDDのサンプル出荷を始めたことを明らかにした。面記録密度は131.5Gビット/(インチ)2。本格的な量産は2006年第3四半期の予定である。

 これらのメーカーを懸命に追いかけるのが富士通である。同社は1990年ごろに、いち早く垂直記録方式の実用化に取り組んだものの、途中で頓挫してしまった。当時は、富士通でHDDの記録媒体やヘッドを担当する研究者のほとんどが垂直記録方式にかかわっていたという。事業化を断念したことは、トラウマのように研究者たちの脳裏に焼き付き、研究の再開を口にする者はいなかった。研究開発を指揮した三浦義正の下で垂直記録方式のHDDの試作に奔走した溝下義文もその一人だった。時が流れてストレージシステム研究所長に就任した溝下を、2000年12月にある若手研究者が訪ねた。

HGST社は、垂直記録方式を用いた2.5インチHDDの出荷を始めることを2006年5月17日に発表した(右下)。2006年5月25日には、東京に東北工業大学 学長の岩崎俊一氏を招いて「Father of Perpendicular Recording」と記された記念の盾を贈呈した(左上)。贈呈式には日立製作所やHGST社の首脳陣のほかに、高野公史氏(右上)が参加した。(右上写真:柳生貴也)
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