垂直記録の研究を進める東芝の研究チームでは、限られた実験環境の中で地道な努力が続いていた。チームを率いる田中陽一郎氏は要素技術の評価から一足飛びに、製品と同じ形の試作機を組み上げる方向に舵を切った。ついに、垂直記録を搭載した試作機は完成。報道関係者向けの技術展示会に出展した…。

※本記事は、2006年発行の『日経エレクトロニクス』に掲載された記事を再構成・転載したものです。記事中の肩書きや情報は掲載当時のものです。

ライバル・メーカーから転職

 「実はあの展示がキッカケで…」

 垂直記録方式を用いたHDDの試作機の公開は、他社も含めてこのときが初めてだった。そのインパクトは、ある技術者の運命まで変えた。

 国内のライバル・メーカーから東芝に転職した技術者がいる。当時は、それまでご法度だったライバル・メーカーからの転職が徐々に認められてきた時期だった。それでも技術者の流動性はまだ小さく、優秀な技術者を採用するのは簡単ではなかった。この技術者に、なぜ東芝に来たのかを田中が聞くと、彼は「垂直記録方式のHDDを展示したとの報道を見て、転職を決意した」と答えたという。

 田中の恩師である東北工業大学 学長の岩崎俊一は、垂直記録方式を用いた試作機が出来上がったと聞いて、技術展示会の半年後の2002年7月に初めて東芝の青梅事業所を訪問した。岩崎の後を継いだ東北大学 教授の中村慶久も、2002年の「IDEMA JAPAN」での発表の際に、田中らが試作した垂直記録方式のHDDを搭載したノート・パソコンを使ってくれたという。

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