東京キー局でカラーテレビの本放送がスタートし、グループサウンズが流行して、「リカちゃん」人形がタカラ(現タカラトミー)から発売された1967年。三菱電機から家庭用エアコン「霧ヶ峰」が誕生した。今では同社を代表する製品にまで成長している。今年(2019年)52年目を迎える霧ヶ峰をこれまで造り続けてきたのは静岡製作所(工場)だ。その静岡製作所が新たな目標に挑んでいる。世界のマザー工場として範を示すべく、「不良ゼロ」の確立を目指しているのだ。その基本的な考え方は、一体どのようなものだろうか。

 ミスを責めるのではなく、ミスのできない仕組みを構築する──。三菱電機の家庭用エアコン「霧ヶ峰」を生産する静岡製作所(静岡市)は、このコンセプトで「不良ゼロ」を目指した造り方を実践している。

 霧ヶ峰は、最初の製品が市場投入された1967年から今年(2019年)で52年目を迎える製品だ。ギネスが世界記録に認定した「エアコンの世界最長寿ブランド」でもあり、競合の中でも知名度は高い。築き上げたブランドの毀損を防ぐために、「霧ヶ峰の生産は品質第一をうたっている」(三菱電機静岡製作所製造管理部長の小野田徹氏)。すなわち、「不良ゼロ」を目指した徹底した取り組みを行っているのが、静岡製作所の最大の特徴だ。

図1 家庭用エアコン「霧ヶ峰」
最上位機種である「FZ」シリーズ。静岡製作所で全量を生産する。(写真:日経 xTECH)
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 ただ、品質第一を掲げる工場は珍しくない。例えば、不良の発生を防ぐために検査を強化したり、作業ミスを厳しく管理したりする方法を採っている企業は多い。だが、検査を増やせばコストが上がる。また、作業ミスをしないように作業者をきつく注意しても、不良の発生率がなかなか下がらないと頭を抱えている企業は多いのではないだろうか。

 ここで静岡製作所は発想を変えた。作業者に追い打ちをかけても良い結果は得られない。なぜなら人は完璧ではないからだ、と。この考えの下、人の作業ではミスが起きることを前提に、ミスをしようにもできない仕組みを追求することで不良の徹底削減を目指すことにしたのだ。

 その仕組みを最上位機種である「FZ」シリーズの生産に導入した(図1)。同シリーズは、いわゆる「プレミアムヒット商品」。従来の最上位機種に付加価値を載せ、5万円ほど価格を上乗せした機種だ。付加価値として搭載した機能は「パーソナルツインフロー」。室内機の左右に2つのプロペラファンを搭載し、それぞれを独立に制御して、風(気流)の強弱や方向を細かく調整する(図2)。これにより、同じ部屋に暑さに敏感な人と寒さに敏感な人がいても快適な空調空間を共有できる。FZシリーズだけのこの機能が顧客に受け、高くても売れる他社にとって垂涎(すいぜん)の製品となっている。

図2 FZシリーズを構成する部品
2つのプロペラファンを搭載しており、それぞれを独立制御する。これにより、風の強弱や方向を細かく制御できる。静岡製作所の展示パネルを日経 xTECHが撮影。
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