宇宙旅行や宇宙ごみ回収にも出資

 第3の事例は「ANA Blue Base」という名称の新しい総合トレーニングセンターです。今年の4月に羽田空港の近く、ヤマト運輸の集配センター「羽田クロノゲート」の隣にオープンしました。500億~600億円くらいかかりましたが、運航乗務員、客室乗務員、整備士、空港スタッフ、スタッフ系のトレーニングセンターがばらばらに分散していたのを1カ所に集めました。

 例えば客室乗務員向けには「モーションモックアップ」と呼ぶ訓練設備をANA Blue Baseに導入します。飛行中の機体は揺れたり傾いたりします。そうした揺れなどをモックアップで再現しながら、客室乗務員が機内サービスの訓練を受けるというものです。おもてなしを学ぶ場として茶室も設けています。IT関連では客室乗務員の訓練に仮想現実(VR)を採り入れました。VRゴーグルを付け、実機さながらの臨場感を持って機内業務のトレーニングをするわけです。こうしたものを数多く採り入れまして、これからの時代にふさわしいトレーニングセンターにしていきたいと思います。ANA Blue Baseは、2020年度から一般の方々に見学いただけるようにすることも考えています。見学の仕方そのものも、詳細はまだ発表できていませんが、面白い形で見学できるように工夫していきたいと思っています。

 第4の事例はドローンです。例えば航空機の整備、点検にドローンを使うと、巨大な航空機を真上から撮影して点検できます。外部のプロジェクトにも参加しており、例えば福岡市の玄界島という離島と対岸との間で物資を運んだり、アフリカで血清を運んだりといった実証実験をしています。今のところ、当社自身がドローンを保有しているわけではありませんが、航空会社として培ったノウハウを生かし、ドローンを運航する際の管制機能に進出していこうと考えています。

 最近はボーイングやエアバスも無人機やワンマン機の開発を進めていますし、政府も「空飛ぶクルマ」という概念を打ち出したりしています。今までより小型で都市部の上空を飛ぶ航空機の開発も進められています。非常に楽しみな世界だと感じています。

 私は子供のころから宇宙が好きでしたので、入社したとき社内報に「いずれは宇宙に出るんじゃないか」といったことを書いたのを覚えています。当時まだANAは国際線も飛んでいなかったのですが。その後社長になったときに、実際に宇宙への取り組みが始まりました。2016年にエイチ・アイ・エス(HIS)とともに、有人宇宙飛行機の開発を手掛けるスタートアップ企業のPDエアロスペースに出資しました。少額の出資ですが、通常の記者会見より多くの記者の方が来てびっくりしたのを覚えています。いずれ日本の技術で大気圏外の旅行や、さらには月や火星へも旅行する時代が来るだろうということで、宇宙ごみの回収に取り組むスタートアップのアストロスケールに出資したりもしています。