売上高2兆円、国内最大の航空会社になったANAグループ。しかし、さまざまな業界でディスラプション(破壊)が起こる今、航空業界も安泰ではないとANAホールディングスの片野坂真哉社長は警鐘を鳴らす。同社が取り組んでいるデジタルトランスフォーメーション(DX)の事例と、将来の変革に向けて欠かせないマインドセットについて明かす。

ANAホールディングスの片野坂真哉社長
(撮影:井上 裕康)
[画像のクリックで拡大表示]

5~10年後、航空需要は安泰か

 さて、今回の「IT Japan」のキーワードはデジタルトランスフォーメーションと聞いております。当社は現在、2018年から5カ年の計画で中期経営戦略を遂行しております。今年はその改訂版(ローリングプラン)を策定しているのですが、そこでは為替や原油価格といった前提条件を少しいじる程度では済まないのではないかと思っています。

 今はさまざまな分野でディスラプションが起こっています。若い人が自動車を運転しなくなったり、アルコールを飲まない人が増えたり、銀行も店舗に人が来なくなったり。私自身は航空業界も例外ではないと思っています。当社の経営陣に対して「これからの5~10年、航空需要は果たして安泰だろうか」と話し、次のローリングプランを策定しようと思っています。 

 デジタルを使って当社の航空事業や関連事業をどのように変えていくかという論点は、次のローリングプランで大きなウエートを占める大事なことだと思っています。

 当社のデジタルトランスフォーメーションは2つの要素を前面に出して取り組みを進めていきます。1つは社員が働きやすいようにしていくこと。従業員満足(ES)の観点です。近年は航空会社も人手不足ですし、女性やシニアの方も含め働きやすい環境が必要になっています。そのためにデジタルをどう活用できるか。人に関連するところでは、データサイエンティストやデータアナリストといった人たちを、これから当社でも採用していこうと思っています。

 もう1つは、当然ながら顧客満足(CS)の観点です。中期経営戦略を決定する当社の役員会は50~60代の役員で構成されていますし、計画を作成するのも40~50代の部長やリーダーです。一方、これからの世の中の主役はミレニアル世代やZ世代と呼ばれる若い人たちです。そうした人たちは何を求めていくのか。もしかすると、これからの航空機はそんなに便利でなくてもいい、運賃が安ければいいと思うかもしれませんね。若い人たちのニーズは何かを、しっかりつかまないといけません。