ヘリコプター2機で創業したANAグループは、今や売上高2兆円を超える国内最大の航空会社となった。しかしこれまで順風満帆だったわけではない。1980年代に進出した国際線は赤字続きだった。それでもグループに根付く挑戦の風土や、ITによるサービスや働き方の変革により、高収益事業へと変貌を遂げた。ANAホールディングス(HD)の片野坂真哉社長がANAグループの歴史と挑戦の風土を明かす。

ANAホールディングスの片野坂真哉社長
(撮影:井上 裕康)
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 ANAホールディングスで社長をしております片野坂でございます。今日は「IT Japan」という歴史のあるイノベーションのイベントに、初日のキーノートスピーチということで名誉なことだと思っております。

 妻が私のスケジュールを見て「あなた、ITで講演するの? 何をしゃべるわけ?」と言われました。私は文科系の人間でして、ANAで40年間働いていますが、IT部門で直接仕事をしたことはありません。そんな私がITのイベントで話して役に立つかどうか、と一般的には感じるかと思います。ただ、私はすぐ妻に返事をしました。いやいや、今は新卒の採用でも文科系や事務系、技術系という壁をなくそうという、そういう時代なんだ。自分みたいな文科系の人間がITをどう語るのかが大事なんだ。そんなふうに言ってきました。

 今日の講演は「ANAの挑戦」、副題は「デジタルはヒコーキを変えるか?」としました。ヒコーキは漢字ではなく片仮名にしております。普通の、漢字で書く飛行機ではないよと言いたいわけです。

 冒頭に当社の概要を少し紹介したいと思います。ANAグループは持ち株会社ANAホールディングスの傘下に80社ほどのグループ会社があり、連結ベースの社員は4万3000人を超えました。2018年度は国内線で約4000万人、国際線で約1000万人のお客さまにご利用いただき、貨物は約80万トンを取り扱いました。これらはANAブランドの実績です。ANAグループには航空会社が5社ありまして、このうちマーケティング上ANAの便名で販売している会社は3社あります。全日本空輸(ANA)のほかに、国内線ではANAウイングス、国際線ではエアージャパンがあります。

 こうしたフル・サービス・キャリアのANAブランドだけではなくて、格安航空会社(LCC)も2社あります。1つは関西国際空港がベースのピーチ・アビエーションです。桃色のカラーで中国や台湾、香港で人気があります。それから成田国際空港をベースにしておりますバニラ・エアです。この2社を今年度中に統合し、LCCはピーチの方に統一していく予定です。また、ピーチは今後航続距離が長い航空機を導入して、アジアの中距離路線に進出していく計画を持っています。

 グループ全体の連結売上高は、2018年度に初めて2兆円を超えることができました。営業利益は1650億円で、これも4期連続で最高益を達成できております。ひとえに会場にいらっしゃる皆様方をはじめ、多くのお客さまにANAグループの航空機をご利用いただいているおかげです。

 ANAグループは航空会社以外にも、空港会社から整備会社、コールセンターまでいろいろな会社があります。IT関連ではANAシステムズという会社があります。今日はITベンダーの方も大勢いらっしゃると思いますが、当社のさまざまなデジタルイノベーションの導入でご協力いただいているかと思います。ANAグループのほぼ全ての部門で、ITを活用して仕事を進めていますし、ITがなければデジタルイノベーションを起こすこともできないと思っています。