最先端ITを駆使したデジタルトランスフォーメーション(DX)をかけ声倒れに終わらせず、実践するにはどうすべきか。PoC(概念実証)にとどまる企業が少なくないなか、日本瓦斯(ニチガス)はガス事業の変革を続けてきた。和田眞治社長が説く、DX実践の6カ条とは。

日本瓦斯(ニチガス)の和田眞治社長
(写真:井上 裕康)
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 当社はDXの取り組みの一環として、東京電力エナジーパートナーと共同でエネルギープラットフォームを提供する「東京エナジーアライアンス」を設立しました。エネルギーの上流からシステム、保安体制まで、全ての機能を新規参入の都市ガス事業者に提供します。ここまでに説明したシステムの機能や環境を提供しながら、協業、競合、異業種、それぞれが集まるオープンイノベーションの「聖地」を目指したものであります。

 同プラットフォームを使ってガス事業へ新規参入された事業者も既に20社ほど出てまいりました。「ライバルに全てのノウハウを提供するのはもったいない」「経済の非対称や差異化で戦うべきでは」こんなご意見があるかもしれません。先ほどからご説明しているように、既に競争の概念は変わりました。統合の時代から分業の時代に入り、単独で変化に対応するコストを負担するのはどんなビッグカンパニーだろうと合理的ではないと私たちは思っています。自前主義の終焉(しゅうえん)を受けて出来上がったプラットフォームなのです。

「東京エナジーアライアンス」の概要
(出所:日本瓦斯、以下同)
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 東京エナジーアライアンスのプラットフォームを使ってシステム機能を共同運用する例をご説明しましょう。各社のお客様のメーターにはインターネット上で連携する各社のQRコードやICタグが付けられています。業務遂行者がスマホでメーターのQRコードを読み込めば、契約先の会社の検針データや保安データが今日の作業で必要な状態で業務遂行者のスマホに配信されます。作業を終えれば結果のデータは各社のローカルサーバーに送信されてスマホ内には残りません。今後は検針も遠隔確認が進んでいきます。

システム機能の共有化の例
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世界最大のLPガス物流拠点でDXを実装

 当社は2020年、世界最大のLPガス物流拠点を完成させる予定です。物流拠点は私たちの業界の中でも最も人的リソースに依存する部分が大きい施設です。ここでも当社はDXを推進しています。月間5万トンのLPガスの処理作業を、DXによって限りなく自動化しています。

世界最大のLPガス物流拠点「夢の絆」
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 車両や人間、LPG容器など、全て入ったときから出るまで自動認証でチェックします。ガスボンベにはRFIDタグを取り付け、全ての車両をGPS(全地球測位システム)ドングルで追跡します。ソラコムのデータ配信やトレーサビリティー管理といった技術を活用しています。工事車両や保安車両といった車両別、あるいは現場作業者の属性や資格、作業クオリティーのスコアの別などに応じてリアルタイムに移動の軌跡を同期、共有、保存、通知されます。緊急時にはAIがそのエリアにどのような車両がどのようなスケジュールで動いているかを認識し、自動的に作業指示が出ます。今は人間が指示を出している領域も、AIで自動化します。

 この拠点の名前は「夢の絆」といいます。様々な事業者が効率的に連携し、価値の共有を目指すとの意味を込めました。