規模の戦略的圧縮――。ロイヤルホストは市場規模を縮小することでサービスの付加価値を上げ、売り上げを伸ばした。ただ、縮小を続けていては未来はない。そこで鍵を握るのがテクノロジーだ。先端技術を駆使して生産性の向上と働き方改革を同時に追求する研究開発店舗など、実験を続ける中で見えてきた日本の外食産業の未来とは。

ロイヤルホールディングスの菊地唯夫会長
(撮影:井上 裕康)
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 新しい業態に挑戦中の「GATHERING TABLE PANTRY」はキャッシュレスがかなり話題になりましたが、実はほかにもいろいろな取り組みをしています。トレーニングツールはスマホを使い、オーダーも当然セルフオーダー。調理機器のマイクロウエーブコンベクションオーブンでの調理は、家電メーカーと一緒に研究をさせていただきました。

 ロイヤルホストには訓練を受けた調理人がいます。調理人がセントラルキッチンから送られてきた食材と素材を合わせて最終調理をして、お客さまにおいしいものをお届けする、これがロイヤルホストの場合です。

 R&D店舗のマイクロウエーブコンベクションオーブンはそれを数値化して加熱する調理機器です。例えば、料理長がきちんと加熱調理して、それと同じ温度変化であるとか、熱の加え方をボタン1つで再現できるようにしました。

 ビーフシチューだったら1番、オニオングラタンスープだったら2番という具合です。要は加熱の仕方をプログラミングをすることで、料理長の作業を機械でどの程度代替できるのか、このお店では研究させていただいています。

 このお店でまず見えたものが下に示すグラフです。これはロイヤルグループの他の店舗とR&D店舗で店長の業務ごとにかける時間の割合を可視化したものです。

R&D店舗と他店舗における店長業務の比較
(出所:ロイヤルホールディングス)
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 店長は接客、調理のほかに開閉店、管理事務、店舗マネジメント、会議、研修など、本当に1日忙しく働いています。ですがこのうち、本当の意味で付加価値を直接的に生み出しているのは、一番上の「接客調理」の部分です。開閉店の作業や掃除は当てはまらない。掃除が上手だからあのお店に行ってみましょうという人はあまりいないと思うんですね。

 人が行うことで直接的に価値を生み出していない作業をどれだけ縮減できるかが、この実験の背景です。ただ、これはすべてを無人化しようというものではありません。人は人が行うことで価値を生み出すことに集中できるように、それ以外のものをどれだけ減らせるかをチャレンジしているのです。

 お店ができて1年半以上たちますが、実験は今第2フェーズに入っています。第1フェーズで得られた結果をどう生かしていくか。私は2つの道があると思っています。

 1つは「横展開」です。既存事業にR&D店舗で得た知見を、どのように他店舗に横展開していくか。もう1つは「縦の展開」で、このお店をさらに進化させるためには何ができるのか。

 横展開から話します。R&D店舗で一番効果があったキャッシュレスなどについてです。現金を使っていませんから、当然のことながらレジ締めはほとんど時間がかかりません。

 ロイヤルグループのほかのお店だと営業が終わって、現金を数えて、そしてその現金をまた収納して、翌日のお釣りなどを用意する。この時間が40分ぐらいかかっていたといいます。R&D店舗は現金がありませんから、ボタン1つでレジ締めが終わります。

 掃除などもそうですね。終わってから今までだったら数十分かかっていたものを、このお店はお掃除ロボットがやってくれています。これは使えるなということで、お掃除ロボットはロイヤルホストに全店展開しました。

「働き手」にとってのキャッシュレス

 難しいのは現金の方です。キャッシュレスは生産性が上がるからといって全店キャッシュレスにしようとしたら、恐らくお客さまはいなくなってしまうと思います。

 ただ、キャッシュレスは何に効果があったのかというと「働く人にとって効果があった」のです。ならば働く人にとってのキャッシュレスを取り入れようということで、現在ロイヤルホストはレジを全部替えています。

 今までだったら毎日現金を数えていたのが今のレジでは数えません。お客さまにお金を入れていただいて、レジの中で自動で精算します。そうすると従業員は現金に対するプレッシャーがなくなり、かつ営業が終わってからお金を数えてレジ締めをするという作業がほぼ数分で終わるようになりました。

 お客さまのキャッシュレスというのはまだまだハードルが高いのだと思います。将来的にはそうなっていくと思いますが、でもまずは従業員に対して効果があった。ではそれをどうやって実現するのかということを考えました。