この3つについて、人口減少社会の中で我々がどういう答えを持っているのか。考えなければいけない状況に差し掛かっています。

 まず冒頭に述べた従来の産業化のプロセスと、これから起こる産業化のプロセスによってどんな環境変化があるかを考えましょう。私は大きな環境変化が2つあると思っています。

 1つは需要サイドの変化です。これまでの産業化のプロセスにおいては、すべての市場が大きくなっていくことが前提となって産業化が進んできました。

 ただ、これから人口が減少していく中では拡大していく市場もあれば縮小していく市場もあります。例えば拡大していく市場はシニアとインバウンドがあります。それ以外の市場はこれからの人口減少の中では縮小していきます。

 もう1つの環境変化は供給サイドの制約です。これまでの産業化のプロセスにおいては供給制約が発生しないという前提でできています。要は働く人を募集すればいくらでも来てくれる時代でした。今ではすごくお客さまが喜ぶ業態を生み出しても、働く人が集まらないからお店を閉めざるを得ない、もしくはオープンができないということが現実に起き始めています。

 ですからこの需要サイドと供給サイドに起きている2つのことを前提に、これからの産業の在り方を考える必要があります。このとき私はいつも下のマトリックスを使って考えています。

需要と供給の変動による市場の遷移を示したマトリックス
(出所:ロイヤルホールディングス)
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 これは横軸が需要サイド、つまり市場の二極化を表しています。向かって右側に行けば行くほど市場が成長していき、左側は市場が縮小していく。例えば右側がシニアとインバウンドで左側がそれ以外です。

 縦軸は上に行くほど働く人の確保はそれほど難しくならないだろうということを表しています。つまり供給制約が比較的弱い。対して下は働く人がなかなか確保できなくなる状態です。

「規模の成長」と「質の成長」

 一番分かりやすいのは右上の部分です。ここは市場が成長して、かつ働く人は相対的に確保しやすい。この状態であれば今までの産業化の在り方を否定する必要はまったくありません。これまで同様、働く人もたくさんいて市場も大きくなっていくわけだから、どんどん規模を大きくしていきましょうと。このアプローチで十分対応ができるのです。

 ただこれからは、このマトリックスの左下に向かってどんどん市場が変遷していきます。市場が縮小していくけれども、働く人もどんどんいなくなる。

 これらの領域について私は、右上を「規模の成長」、左下を「質の成長」と呼んでいます。よく「規模の成長で産業化するとはすごく分かりやすいが、質の成長で産業化するとはどういうことなのか」と言われます。そのときは左上の領域と比較してみてください。

 この領域は市場が縮小するけれど、働く人はいくらでもいるという状態です。何が起こるかというと、永遠に終わらない競争です。縮小していく市場にどんどん人が流れていく。永遠にレッドオーシャンが続きます。

 ところが左下の領域では、働く人を確保できない企業から市場からの退出を求められる。これが、ロイヤルホストがなぜ24時間営業をやめ、営業時間を短縮し、休業日をつくっているかということの背景の考え方になります。

 我々は「規模の成長」を否定しているわけではありません。我々のグループでもインバウンドに強いてんややリッチモンドホテルなどは右上の領域です。

 一方で「質の領域」にはロイヤルホストや専門店を位置付けています。私は規模の成長を否定しているわけではなく、これとは違う第3の道というものを、今あらためて考えてみるべきタイミングに来ているのではないかという問題意識があるのです。