この産業化のプロセスは人口が増加していくときには画一性、スピード、効率性といったものに非常に親和性がある形で進んできました。しかし我々は今、生産性が非常に低いという点、働き手がこのままでは確保できなくなるという点を問題意識として持たざるを得ない状況になっています。

 これからの日本は圧倒的に人口が減っていきます。すると人口が増加していくときに親和性のあった産業化のモデルが、人口が減少していくときに本当にそのまま通用するのか。これをまず疑ってみなければいけないと、私は大前提として思っています。

 企業にとっては生産性が非常に大事なキーワードになってきます。これから人口が減少していく中での生産性、つまり従業員1人当たりがどれだけの付加価値を生み出すか。そしてそれを持続的に続けていくためにはどのようなアプローチが必要なのか。これをもう一度考える必要に迫られているのです。

 日本の人口動態という意味ではどんどん人口が減少します。一方で世界の人口は増加していきます。この2つのメガトレンドをまず前提として意識する必要があります。

 平成の30年間で日本の人口はたった300万人しか増えていません。世界の人口は23億人増えました。もし令和の時代が同じだけ続いたとしたら、日本の人口は2700万人減って、世界の人口は同じく23億人増えると言われています。

 この2つのメガトレンドが外食産業の生産性にどのような影響を与えるのでしょう。サービス産業は人が価値を提供して付加価値を生み出す産業ですから、日本の人口減少は当然ながらその担い手がいなくなっていくことを意味します。つまり日本の人口が減少していくと、売上高に対してのネガティブな要因になり得ます。

 世界の人口が増加するということは、世界的な食糧の争奪戦が起きて結果として原価を引き上げていく。つまりこれから起こるメガトレンドは、我々の生産性を維持することすらできなくなる環境がじわじわと進んでいくことを意味します。

 この状態が進めば外食産業の持続的成長が非常に危機にさらされるという問題意識を持っています。ですから生産性というものを基軸に考えていく必要があると思っています。

サービス産業のジレンマ

 サービス産業には「サービスの提供と消費の同時性」という特徴があります。製造業であれば物を安く作って、安く運んで、安くストックして高く売る。対してサービス産業は提供した瞬間にお客さまが消費をされる。

 これがどのように影響するのでしょう。下の式を見てください。例えば生産性が非常に低いお店があり、生産性を上げるために従業員の数を1人減らしたとします。

生産性を示す式
(出所:ロイヤルホールディングス)
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 そのときは一時的に生産性は上がります。ただ当然のことながら同時性があるのでサービスも劣化します。それによってお客さまの再来店が減っていく、今まで頼んでくれていたデザートを頼んでくれなくなるといったことが起きます。

 つまり同時性があるが故に、単純に人を減らしただけでは分子の付加価値も小さくなって生産性を下げてしまう。ここにサービス産業のジレンマがあり、この産業における生産性を考える際に非常に大事なポイントになります。

 分母を下げたつもりが、それ以上に分子を小さくしてしまうことで生産性を下げてしまうリスクがある。これを前提にサービス産業の構造を考えていく必要があるのです。

 ではどのようなアプローチが生産性を上げられるのか。1つは分子の付加価値をいかに上げていくかを考えます。お客さまにより高い単価で買っていただけるような商品、サービスをいかにつくっていくかが重要です。

 もしくは分子を増やすという意味で、新しい市場を開拓していくことも考えられます。また分母を小さくするという意味では、サービスの提供と消費の同時性に十分留意した上で、分子に影響しない形で分母を小さくする方法を考えることもできます。