日本の人口減少と世界の人口増加を背景に外食産業は変革の時を迎えている。求められるのは働き方改革と生産性の向上の両立だ。ロイヤルホールディングスの菊地唯夫会長はテクノロジーがその鍵を握ると説く。同社が24時間営業の廃止や、キャッシュレスやロボットなど先進技術の導入に取り組み続ける理由とは。

ロイヤルホールディングスの菊地唯夫会長
(撮影:井上 裕康)
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 本題の前に前提となる認識を3つ話します。1つめは我々の外食産業に限った話ではありませんが、人手不足などさまざまな課題を抱えており、このままの状態が続けば産業の持続性すら危うくなるという危機感がある点です。

 2つめは、外食産業はインバウンド、アウトバウンドとこれからの時代に対して非常にインパクトや可能性を持つ産業である点です。これは日本経済にとっての大きな可能性とも言えます。

 3つめは、外食産業はデジタルに対して非常に縁遠い産業である点です。デジタル、IT化という話になると、どうしても資本が必要であるとか企業規模が一定限度必要だという話になります。

 外食産業は全体の規模としては25兆円と非常に大きな産業であるにもかかわらず、個別の企業で見ると最大規模でも5000億円程度です。そういう意味では非常に「中小零細」が多く、裾野の広い産業であると言えます。

 つまり、非常に大きな課題を抱えているがポテンシャルはすごく高い。しかしそこに対するデジタルへのアクセスは非常に弱いという状況です。

 この3つの前提認識に立ったとき、外食産業の持続的成長はデジタルによってどう変えていくことができるのか。そんな話をしたいと思います。

 ロイヤルグループと聞くとロイヤルホストの印象が強いかと思いますが、外食のほかにもコントラクト、機内食、ホテルの合計4つの主力事業を有しています。外食はロイヤルホストのほかに天丼のてんや、シズラー、シェーキーズといった業態を全国で500店舗強運営しており、約600億円の事業規模になります。

 コントラクト事業は特定のブランドで展開するというより、さまざまな施設で食とサービスを提供する事業です。空港、高速、百貨店内、社員食堂、コンベンションセンター、病院、老人ホーム、ゴルフ場などいろいろな施設で食を提供しています。これが225店舗で事業規模は約350億円です。

 機内食は関空、福岡、那覇、そして日本航空様と合弁で成田と羽田で機内食を作っています。ホテル事業はリッチモンドホテルという名前で全国約40のホテルを展開しています。

 4つの事業をすべて合わせると約1400億円弱の売り上げになります。そのうち半分が外食、4分の1がコントラクト、残りの4分の1が機内食とホテルという割合です。

「従来の産業化」を疑う

 外食産業のデジタル化を考える上で、まずは従来の産業化のプロセスを振り返ってみます。外食産業というのは1970年代あたりから産業化が本格的に進んだと言われています。

 当時はGDP(国内総生産)も成長し、人口も増加して、モータリゼーションも進んでいきました。とにかくお客さまの数がどんどん増えていくわけですから、産業化のキーワードは「画一性」「スピード」「効率性」になります。

 お客さまが増えていく中で一店舗一店舗、手作りで作っていくやり方では間に合いません。とにかくお客さまが喜ぶ業態をつくったら、それをいかに画一的にスピーディーに効率的に広げていくか。これが産業化のキーワードだったと思います。

 こうした背景に「チェーン理論」「セントラルキッチン」「フランチャイズシステム」といったものをうまく取り入れながら、外食産業は25兆円という非常に巨大な市場規模を持つに至った。これが産業化の大きな構造だったわけです。