富士山の裾野に位置する工業団地にこの敷地はある。設計依頼者は、地域に弁当を供給する企業である。食育というグランドテーマを大切にしつつも、未来にふさわしい独創性が設計には求められていた。

保育園は富士山の裾野に位置する。周囲は工業団地ながら、富士山や駿河湾に近く、おおらかな環境にある(写真:木田 勝久)
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円形の屋根が連なる。重なり連続する軒下は廊下として利用できる(写真:木田 勝久)
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東側から水遊び場の方を見る。機能の異なる大小様々な傘のような室が群をなす。手前は2歳児保育室(写真:木田 勝久)
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 大小様々な円形の傘を並べることは、スタディーの早い過程で決まっていた。駿河湾に臨み富士を仰ぎ見る、工業団地にありながら極めておおらかな環境の全方向に軒下を開きたいと思ったからである。同時にその配置が行き止まりのない回遊性を生み出すことにも気が付いていた。よく見れば汁物を入れる椀(わん)にも似ている。様々な解釈が同時に可能な実に都合の良い案が生まれた瞬間であった。何を先に意識したということはない。

円形プランで機能の接続が自由に

 円形平面の計画そのものはさほど新しいものではない。しかしながら、それが大小連なり、水の中を立ちのぼる泡(バブル)のような様相を呈しているのは珍しいかもしれない。この平面形態のメリットは、意外なほどに自由であるということである。

 世の中のほとんどを占めるグリッドを基本とした計画の場合、XY方向4辺に隣の機能を接続することになるが、このバブル型プランの場合、大きさを調整すればいかようにも発展させることができる。平面を計画するとき、機能を丸で囲んでその関係性をつなげることがある。それを現実のプランに移すとき、四角の場合は妥協せざるを得ないのだが、それがない。

 加えて、もう1つ大きなメリットは行き止まりがないということである。行き止まりのない回遊性は、子どもに終わりのない動きをもたらすという計り知れない現象を生み出す。

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