ARU田口設計工房(埼玉県桶川市)を主宰する田口隆一代表〔写真1〕は、設計監理業務や住宅診断(インスペクション)で施工品質を確認する機会が多い。その経験を踏まえ、住宅会社の現場監督向けのセミナーを各地で開いている。田口代表は「トラブルになった施工現場の経緯を依頼者に尋ねると、『現場監督のひと言がきっかけだった』という人が多い」と指摘する。

〔写真1〕「失言の前に相互不信の火種」
ARU田口設計工房の田口隆一代表は、住宅会社の現場監督向けのセミナーを各地で開いている。「失言は着火剤に過ぎない。その前に相互不信の火種がくすぶっている」が持論だ(写真:日経 xTECH)
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 どんな言葉がトラブルに発展しやすいのか。田口代表のこれまでの経験をまとめてみた〔図1〕。

〔図1〕田口氏が挙げる「誤解を招きやすいNG表現」
(資料:取材を基に日経 xTECHが作成)
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 図1でまずは、現場監督がよく口にする「こんなものです」「これくらいは問題ないです」といった言葉だ。

 例えば、基礎コンクリートにひび割れがあると、依頼者は構造的な欠陥だと考えやすい。現場監督が「こんなものです」と答えれば、依頼者の不安は増幅するだろう。品確法(住宅の品質確保の促進等に関する法律)は「許容されるひび割れ幅」と「許容されないひび割れ幅」を明記している。「基準値とその理由を一緒に説明すれば、依頼者は納得しやすい」と田口代表は指摘する。

 「図面通りです」「設計が分かっていません」という言葉もNGだ。責任転嫁と受け取られ、当事者能力を疑われる。民間(旧四会)連合協定工事請負契約約款の16条では、図面に疑義がある場合、施工者は監理者に通知する必要があると記している。図面通りに施工しても免責されない場合があるのだ。田口代表は「図面の問題点を発見する能力を磨き、放置しないことが重要だ」と力説する。

 「見えなくなるから大丈夫です」も誤解を招きやすい。依頼者は「他の見えない所も手を抜いているのではないか」と疑心暗鬼になる。

 田口代表は「見えない部位の重要性の見極めが重要だ」と言う。仕上材の見え隠れ(隠れて見えない)の部分なら、見え掛かりの部分と比べてさほど重視されない。「しかし、構造や防水、断熱、気密に関する部位で『見えなくなるから大丈夫』と考えるのは非常に危険だ。リフォームや修理の際に瑕疵が見つかれば、損害賠償請求の対象にもなり得る」(田口代表)

 ほかにも「そのうち、やります」といった言葉も、施工時期を巡るトラブルに発展しやすいという。また、依頼者の設計変更の要望を「できません」「無理です」と一刀両断で切って捨てるのも依頼者の心証を害する恐れがある。さらに、依頼者からの施工上のクレームに対して、職人に既に指示しているから大丈夫と思い込み、「ちゃんとやってあります」と即答するのも危険だと田口代表は強調する。

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