自動車部品大手のドイツZF(ZF Friedrichshafen)は、ドイツ・ドレスデンで開催した技術イベント「ZF Global Technology Day 2019」で自動運転技術に対する取り組みを発表した。乗用車向けでは当面は「レベル2+」と呼ぶ技術に注力する。

 「この方針は市場の要求に沿ったものだ。消費者は乗用車に対してレベル4に必要な7万~10万ドル(110円/ドル換算で770万~1100万円)ものコストを払う気はない」。同社CEO(最高経営責任者)のウォルフ=へニング・シャイダー(Wolf-Henning Scheider)氏は同イベントの基調講演でこう述べた(図1)。完全自動運転車には数百TOPS(毎秒数百兆回)もの演算性能を持つ車載コンピューターや大規模なソフトウエア、高度なセンサー群が必要だからだ。

図1 ZF CEOのウォルフ=へニング・シャイダー氏
(撮影:日経Automotive)
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 一方、レベル2+の場合、「エントリーレベルのシステムなら追加コストは1000ドル(11万円)、ハイエンドのシステムでも数千ドル(数十万円)で済む」(同氏)という。このため、乗用車のオプションとして十分に受け入れられると説明する。

 「少なくとも2030年までは乗用車の完全自動運転は実現しないだろう」とシャイダーCEOはいう。ある調査によると、人々は乗用車の完全自動運転を信じておらず、「実現に時間がかかることは問題ではない」(同氏)とする。世界的に自動運転車に対する法整備が遅れている事情もある。乗用車向けの自動運転技術は、当面レベル2+が主流との見方である。

 レベル2+とは、自動で加減速や操舵(そうだ)を行い、車線維持やACC(アダプティブ・クルーズ・コントロール)を実現する「レベル2」に、360度センシングやAI(人工知能)を追加して機能を高めたものを指す。代表的なものとしては、半導体ベンダーの米エヌビディア(NVIDIA)が提供する車載SoC(System on Chip)「Xavier」とソフトウエア「Drive Autopilot」をベースとした技術がある。これはZFに限らず、ドイツ・コンチネンタル(Continental)も採用している(関連記事)。

 エヌビディアのSoCとソフトをベースにZFが開発したレベル2+向けの車載コンピューターが「ProAI Gen2(High)」であり、ZFはレベル2+のシステムを「coPILOT」と呼んでいる(図2)。coPILOTの詳細は2019年4月の上海モーターショーで発表した(リリース)。2021年の提供を目指す。Xavierを1個使ったシステムである。

図2 ZFの車載コンピューター「ProAI」ファミリー
(出所:ZF)
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 ただ、このシステムは「決して安くはない」(シャイダーCEO)という。具体的には「アッパーミドルクラスの乗用車のオプションとして提供する方向」(同氏)である。一方、coPILOTの機能を部分的に使った安価なシステムも用意しており、「小型車向けには、より安価なシステムを提供する」(同氏)と述べた。こちらも2021年の提供を目指す。

 より安価なシステムとして同社が示したのは、「ProAI Gen1(Entry)」と「ProAI Mid」、そして米インテル(Intel)傘下のイスラエル・モービルアイ(Mobileye)のチップを使ったソリューションである。

 ProAI Gen1(Entry)は演算性能が1TOPSで、NCAPの2022年の要求に対応できる低コストモデルである(リリース)。ボードには米ザイリンクス(Xilinx)のFPGAを搭載するが、ZFはプロセッサーは変更可能と説明している。1TOPSの性能なら、さまざまな半導体ベンダーの選択肢がありそうだ。FPGAを搭載しているのは、さまざまなセンサーの情報を集めて統合処理する「センサーフュージョン」にFPGAが適しているためと考えられる。

 ProAI Midは展示物はなく、講演スライドの中でのみ登場した。「Small Xavier S」を搭載し、演算性能は10~15TOPSとなっている。見た目はProAI Gen1(Entry)のFPGAをSmall Xavier Sに置き換えたように見える。

 一方、モービルアイのチップは、現在は車載カメラの中に組み込んでおり、ProAIファミリーとは切り離されている。モービルアイのSoC「EyeQ4」を搭載したZFの3眼カメラ「TriCam」は、ドイツBMWや日産自動車の「プロパイロット2.0」に採用され、注目を集めている(関連記事)。

 EyeQ4の演算性能は2.5TOPSだが、次世代の「EyeQ5」は約10倍に高性能化する見通しで、30TOPSのXavierとはライバル関係になる。ただ、ZFはモービルアイの技術を「コスト最適化のソリューション」として紹介するにとどめた。ハイエンドの技術はエヌビディア、ローエンド(低コスト)の技術はモービルアイという形ですみ分けを図っているようだ(図3)。

図3 2社の半導体ベンダーを使い分け
(出所:ZF)
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